高級スパでもなければ、専門の施術者もいない。それでも「マッサージ」と呼ばれるサービスが、いまベトナムで静かなブームを巻き起こしている。
担い手は、白くふっくらとしたアヒルの群れだ。木製のベンチに横たわった観光客の体に、農家が餌をまくと、数十羽のアヒルが一斉に集まり、くちばしで体をついばみ始める――。このユニークな光景を捉えた動画がSNS上で急速に広まり、ベトナム国内外の関心を集めている。
農村のアヒルが「マッサージ師」に? SNSで話題の光景
舞台となっているのは、ベトナム中部の古都ホイアン近郊。真っ白なアヒルたちが列をなして「持ち場」へ向かい、地元農家が体の上に穀物をまくと、数十羽のアヒルが一斉に群がってくる。くすぐったさに身をよじりながら笑い続ける観光客の姿と、のどかな農村の風景が組み合わさり、独特の開放感にあふれた映像が拡散した。
豪華な設備も熟練の技術も不要で、身近な家禽がそのまま「マッサージ師」役を務めるという意外性が多くの視聴者の心をつかんでいる。外国人観光客の弾けるような笑い声もあいまって話題は瞬く間に広がり、ベトナム国内のネットユーザーからも「自分もやってみたい」というコメントが相次いだ。農村ではありふれた存在だったアヒルが、SNS時代の新たな観光アイコンとして注目される展開となっている。

アヒルマッサージ体験者の声と参加のしやすさ
ホイアン郊外の農園「Duck Stop」では、人懐っこいアヒルたちが観光客の足元に自然と集まってくる。2026年6月に投稿されたレビューでは、一人旅の旅行者が「無数のアヒルに囲まれる貴重な体験だった」と振り返っているほか、ロンドンから訪れたグループも、スタッフの親しみやすい対応や思わず笑ってしまうマッサージ体験、美しい田園風景を挙げ、記憶に残るアクティビティとして高く評価している。

このサービスの発案者は2025年5月中旬に着想を得たという。参加にあたって入園料などの決まった料金はなく、観光客はその場でアヒル用の餌を1万5000〜3万VND(日本円でおよそ90〜180円)購入するだけで気軽に体験できる。舞台となっているコミュニティは、川の中州に位置する面積約70ヘクタール、人口約300人ほどの小さな集落だが、長年にわたり地域を代表するエコツーリズムの拠点として観光客を惹きつけてきた歴史を持つ。

アヒルマッサージが映す、新しい観光の形
派手な施設も専門技術も必要とせず、身近な家禽が主役となる「アヒルマッサージ」は、素朴さと意外性が生んだ新しい観光コンテンツと言える。SNSでの拡散をきっかけに国内外の関心が高まっており、ホイアンをはじめとするベトナムの地方観光地が持つポテンシャルを改めて感じさせる事例だ。
