本記事の執筆・監修者
株式会社InfoBase 代表取締役

三浦 賢弥

Kenya Miura

・ベトナム市場調査・戦略立案に約8年関わり、中小中堅企業から大手企業まで累計500社以上のベトナム進出支援に携わる。

・ベトナム留学→修士号取得→政府機関→民間コンサル会社を経てベトナム歴10年超。今後も、人生をベトナムに全振り。

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2026年1月の第14回党大会にて、55歳という若さ政治局入りしたことで注目人物とされるレ・ミン・フン氏2026年4月の国会審議に向けた予測や日本との関係・日本企業にとっての意味を考察しています。

ベトナム第16期国会選挙、投票率99.38%を記録―4月国会で主要人事を審議

出所:VnExpress

ベトナムで2026年3月16日、国会議員選挙の投票が行われた。議員任期は5年。全国182の選挙区に立候補した864人の中から500人を選出する。結果は3月23日ごろに判明する見通しだ。

国営ベトナム通信などによると、有権者は18歳以上の約7,900万人。候補者のうち女性は392人、少数民族は188人、非共産党員は60人超となっている。

ベトナムでは今年1月、第14回共産党大会を経て、トー・ラム氏が最高指導者である党書記長に再任された。今回の選挙結果をもとに、4月6日から国会が開かれる予定で、国家主席や首相、国会議長など重要ポストの人事が審議される見込みだ。

国家選挙評議会が3月15日22時に発表した報告によると、全国の有権者総数は7,651万6,637人で、実際に投票した有権者は7,604万3,527人、投票率は99.38%に達した。投票率が50%を下回った選挙区は一つもなかった。

今回の選挙では、第16期国会議員500人のほか、省レベルの人民評議会議員2,552人、村などの人民評議会議員7万2,611人が選出される。

2026年3月の総選挙と1月の第14回党大会は何が違うのか?

第14回党中央委員会第1回総会にて、トー・ラム書記長および新政治局・書記局のメンバーが公表された。出所:Vietnam News

今回の総選挙に先立って開催されたのが、2026年1月の第14回党大会である。この大会はベトナム共産党が主催する党内会議であり、有権者ではなく党代議員が参加し、党の最高指導部(党中央委員会・政治局・総書記など)の人事を決定するとともに、2026〜2030年の中長期方針・戦略を採択する場だ。同大会ではすでに、トー・ラム書記長の続投新たな中央指導部の発足、および2026〜2030年の発展戦略が正式に決定されている。

同大会で決まった主な事項は以下の通り。

  • トー・ラム氏が第14期党中央委員会の総書記に再選(任期2026〜2031年)
  • 第14期党中央委員会が発足(正規委員180名、補欠委員20名)
  • 新中央委員会が政治局・書記局・中央検査委員会およびその委員長を選出し、新体制がスタート

一方、3月16日の総選挙は、憲法・選挙法に基づく国民投票である。約7,900万人の有権者が、第16期国会(500議席)および各級人民評議会議員(任期2026〜2031年)を選ぶ。候補者の9割超は共産党の推薦候補であり、祖国戦線が事前審査を通じて候補者を絞り込む仕組みとなっているが、形式上は複数候補の中から選ぶ「立候補者選択」の形をとっている。

両者の違いを整理すると、1月の党大会は「共産党が党内の指導部人事と路線方針を決める場」であり、3月の総選挙は「国民が国会・地方議会の議員を選ぶ場」である。

開催主体は前者が共産党、後者が国家(選挙委員会)であり、参加者も党代議員と一般有権者で異なる。ただし両者は連動しており、党大会で決まった指導部・路線方針を、国会という国家機関を通じて制度的に実施に移すための選挙という位置づけでもある。

今後の注目ポイント

第16期国会の第1会期は4月6日〜25日に開催予定で、前半は選挙結果の確認とともに、国会議長・国家主席・首相・政府指導部などの主要ポストを正式に選出する議題が中心となる。

トー・ラム総書記体制のもと、誰が国家主席・首相・副首相・主要経済閣僚(計画投資・財務・工商・公安・国防など)に就くかが、今後5年間の政策運営のスタイルとスピードを左右する最大の注目点だ。

特筆すべきは、第14回党大会で選出された第14期党中央委員会(200名)のリストに、ファム・ミン・チン現首相とルオン・クオン現国家主席の名前が含まれていない点であり、両氏は次期5年(2026〜2031年)の党中枢から外れており、4月の国会では新たな人物が両ポストに就く可能性が高い。

注目人事:55歳で政治局入り|レ・ミン・フン氏

注目人事:55歳で政治局入り|レ・ミン・フン氏

ベトナム共産党政治局メンバー19名が選出されているが、4月国会の審議を見越したうえでの注目人物はレ・ミン・フン(Le Minh Hung)氏と見ている。ミン・フン氏は、55歳という若さで政治局入りを果たした、次世代を担う注目の指導者である。

フン氏は1970年生まれ、ハティン省出身であり、中央銀行総裁や党中央の要職を歴任した金融・マクロ経済の専門家である。中央銀行総裁としての実務経験に裏打ちされた政策立案能力に加え、党内での人脈や政治的駆け引きのノウハウも兼ね備えた稀有な人材と現地報道でも評価されている。

また、日本との関係もポイントだ。日本の旧埼玉大学大学院(現・政策研究大学院大学)への留学経験があり、日本に精通している可能性が高い。

これに加え、ベトナム共産党の指導部の高齢化が進展する中で、50代での政治局入りは世代交代の進展を示す重要な兆しとも受け取れる。トー・ラム書記長が進める、既得権益にとらわれない大胆な改革を推進する「若い中枢エリート」として期待が集まる。

ベトナム共産党が2030年までに掲げる年率10%以上の経済成長という野心的な目標を達成するために、高度な経済運営能力を持つフン氏が要職に就く可能性は高いのではないだろうか。

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2026年1月の第14回党大会にて、55歳という若さ政治局入りしたことで注目人物とされるレ・ミン・フン氏2026年4月の国会審議に向けた予測や日本との関係・日本企業にとっての意味を考察しています。

【参考】2026~2030年期のベトナム共産党政治局メンバー19名

2026年1月の第14回党大会では以下のベトナム共産党政治局メンバー19名が既に選出されている。

No.氏名主な役職・肩書き
1トー・ラム / To Lam第13期党中央委員会書記長、中央軍事委員会書記
2チャン・タイン・マン / Tran Thanh Man政治局員、国会党委書記、国会議長
3チャン・カム・トゥ / Tran Cam Tu政治局員、党中央書記局常務委員、中央党機関党委書記
4レ・ミン・フン / Le Minh Hung政治局員、党中央書記、党中央組織委員会委員長
5ドー・ヴァン・チエン / Do Van Chien政治局員、国会党委常務副書記、国会常務副議長
6ブイ・ティ・ミン・ホアイ / Bui Thi Minh Hoai政治局員、党中央書記、祖国戦線・中央諸団体党委書記、祖国戦線中央委員会議長
7ファン・ヴァン・ザン / Phan Van Giang政治局員、政府党委常務委員、中央軍事委員会副書記、大将、国防大臣
8ルオン・タム・クアン / Luong Tam Quang政治局員、政府党委常務委員、中央公安党委書記、大将、公安大臣
9グエン・ズイ・ゴック / Nguyen Duy Ngoc政治局員、ハノイ市党委書記
10グエン・チョン・ギア / Nguyen Trong Nghia政治局員、党中央書記、中央軍事委常務委員、大将、人民軍総政治局局長
11チン・ヴァン・クエット / Trinh Van Quyet党中央書記、党中央宣伝・教育・大衆動員委員会委員長
12レ・ホアイ・チュン / Le Hoai Trung党中央書記、政府党委常務委員、外務大臣
13レ・ミン・チー / Le Minh Tri党中央書記、党中央内政委員会常務副委員長
14チャン・ルウ・クアン / Tran Luu Quang党中央書記、ホーチミン市党委書記
15ファム・ザ・トゥック / Pham Gia Tuc党中央委員、党中央事務局長(オフィス長)
16チャン・シ・タイン / Tran Sy Thanh党中央委員、党中央監査委員会委員長
17グエン・タイン・ギエ / Nguyen Thanh Nghia党中央委員、党中央政策・戦略委員会委員長
18ドアン・ミン・フアン / Doan Minh Huan党中央委員、ホーチミン国家政治学院党委常務副書記・常務副院長
19チャン・ドゥック・タン / Tran Duc Thang党中央委員、政府党委委員、農業・環境大臣

参考文献

政治動向(第14回党大会・政治局人事)

議会・行政手続

選挙統計