ベトナム保健省が、公的医療保険にあたる強制健康保険(BHYT)の拠出率を段階的に引き上げる政令草案をまとめ、意見公募にかけている。草案どおりなら2027年7月1日から料率は4.5%から5.1%へ上がり、企業側の料率は賃金の3%から3.4%になる。料率は将来6%まで上げる3段階の道筋も示されている。

企業負担は3.4%へ、2027年7月から引き上げ案

引き上げ幅は0.6ポイント、3分の2は使用者負担

現地メディアTuoi Treよると、草案は2027年7月1日から、強制健康保険の月額拠出率を、強制社会保険の算定基礎となる月額賃金の5.1%へ引き上げる内容だ。現行は4.5%で、0.6ポイントの上乗せになる。拠出は使用者が3分の2、労働者が3分の1を負担する。料率はその後も動く案で、5.4%へ、さらにその3年後に6%とする3段階の道筋が示されている。

現行4.5%のうち使用者の負担分は3%にあたる。残る1.5%が労働者の負担になる。これをあてはめると、引き上げ後は使用者3.4%・労働者1.7%となり、企業側の負担は0.4ポイント、労働者側は0.2ポイント増える。

基礎給与ベースでは月約1万5000ドンの増加

Tuoi Treよれば、基礎給与は2026年7月1日から月253万ドン(約1万5000円)。基礎給与を拠出の基礎とする加入者では、拠出額は現行4.5%の月11万3850ドン(約675円)から、5.1%では月12万9030ドン(約765円)へ、約1万5000ドン(約90円)増える。労働関係を通じて加入する従業員の拠出は各人の算定基礎賃金に対する率で決まるため、増加額は賃金水準によって変わる。

給付拡大とセットで進む料率引き上げ

給付率85%への引き上げとがん検診の給付

料率引き上げは給付拡大とセットで提案されている。対象は75歳以上の高齢者、労働能力が35〜60%低下した軽度障害者、18歳未満の人など(政府電子新聞)で、給付率は80%から85%へ上がる案だ。子宮頸がんなど7種のがんとB型・C型肝炎の計8分野のスクリーニング検査も、給付対象に加わる。

加入者は約9910万人、財源確保が課題に

加入者は2026年6月末時点で約9910万人、人口の96.91%に達した。保健省は狙いを、健康保険の収支均衡の確保と給付拡大の同時実施だと説明している。

日系企業への影響と実務対応のポイント

企業影響額は賃金の0.4%、上限額も存在

企業側の増加分は0.4ポイントで、対象となる従業員の算定基礎賃金に乗る。ベトナムの声放送局によると、強制社会保険の算定基礎賃金には上限があり、2026年7月1日から月5060万ドン(約30万円)になった。

草案は拠出基礎を「強制社会保険の算定基礎となる月額賃金」としており、健康保険にも同じ上限が及ぶと読めるが、健康保険の上限として明記した資料は現時点では確認できない。仮に同じ上限が適用される場合、上限に達する高給与層では企業負担の増加は月20万2400ドン(約1200円)で頭打ちになる計算だ。

給与実務の見直しは2027年前半が正念場

以下は草案から推測した見立てだ。労働関係を通じた加入は2027年7月1日から、世帯加入は2028年1月1日からと、適用開始が半年ずれている。企業経由の加入が先行する設計とみられ、給与計算の料率変更や労使への説明といった実務は、政令の施行日とされる2027年4月1日を挟む時期が山場になる可能性がある。

もう一点、草案は5.1%で止めず、5.4%、6%へ進む3段階の道筋を明示している。仮にこの通りに進むなら、健康保険は一度きりのコスト増ではなく、中期の人件費計画に織り込む固定費に近づくとみられる。ただし現時点では意見公募中の草案で、料率も時期も確定している訳ではない。

※換算レート: 1万ドン=59.27円(2026年9月8日時点、出典: xe.com)

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長

三浦 賢弥

KENYA MIURA

山形県山形市出身。筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。

ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。

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