ベトナムでは、大麻の所持・使用・販売がすべて違法である。外国人といえども例外ではない。大麻樹脂なら1グラム、乾かした大麻草なら1キログラムから懲役刑の対象になり、売買と製造には死刑の可能性も残る。

世界の大麻をめぐる政策は、この数年で大きく動いた。タイは2022年に大麻を麻薬リストから外したが、2025年には事実上、再び規制を強める方向に向かっている。日本でも2024〜25年にかけて法律を組み替えた。そのなかでベトナムは、規制を緩める方向にはまったく動いていない。

「ベトナムで大麻を持っていると、どのくらいの罰を受けるのか」

「観光客や駐在員にも、現地の人と同じ罰則が適用されるのか」

「産業用ヘンプやCBDに関する事業は、ベトナムで成り立つのか」

この記事では上にあげた問いに答えつつ、ベトナムの大麻規制に関する以下の内容を整理する。

  • 大麻を禁じる根拠法令と、行為別・数量別の罰則
  • 外国人に適用される行政罰と刑事罰の線引き
  • 産業用ヘンプとCBDをめぐる、法律と実態のずれ
  • タイ・日本と並べたときのベトナムの位置

ベトナムへの赴任や出張を控えている方、現地に住んでいる方は、この記事を読んで大麻などの犯罪に巻き込まれることのない準備をするのに役立ててほしい。産業用ヘンプやCBDに関連する事業で、ベトナムへの進出・展開を検討している企業にとっても、参入するかどうかを判断する出発点になる。

※この記事は公開された資料に基づく一般的な情報提供であり、個別案件についての法的な助言や適法性の保証をするものではありません。輸入・販売・使用を勧めるものでもありません。大麻・ヘンプ・CBDの取扱いは、成分、原料部位、数量、用途、製品区分、輸出入形態、許認可および当事者の状況により結論が異なり得ます。ベトナムにおける具体的な特定の行為や事業を検討する場合は、実行前にベトナムで資格を有する弁護士および所管当局へご確認ください。(情報基準日:2026年9月10日)

大麻の所持・使用・販売はすべて違法

ベトナムで大麻を規制する法律は、2025〜26年にかけて大きく改正された。刑法の罰則、麻薬防止法、薬物の一覧を定める政令が、いずれも新しくなっている。罰の重さは行為によって大きく違う。使うだけの行為は、原則として警告か罰金という行政罰で処理される。

以下では、どの法律が何を禁じているのかを確かめる。そのうえで、

  • 行為ごとに見る罰則
  • 2025年も法改正が変えたもの
  • 外国人への適用

を順に説明していく。

刑法の改正案を国会に提出したルオン・タム・クアン公安大臣
(出所:Vietnam.vnTrình Quốc hội phương án thu hẹp phạm vi áp dụng hình phạt tử hình”)

大麻を「麻薬」として禁じる法令の全体像

今のところ、大麻の規制に関する柱は3つある。

  • 麻薬防止法(120/2025/QH15、2026年7月1日に施行)
  • 刑法249条から252条(86/2025/QH15、2025年7月1日に改正法が施行)
  • 薬物の一覧を定める政令(28/2026/NĐ-CP、2026年1月19日に施行)

麻薬防止法120は、それまでの同法を失効させ置き換えられた。政令28も古い薬物リストの政令を置き換えている。法律86だけは性格が違い、元の刑法そのものを廃止したのではなく、その一部を書き換えた改正法である。

政令28の薬物リストでは、規制がもっとも厳しい区分に

  • 大麻草(葉・根・茎・枝・蕾・花・果実)
  • 大麻製剤(大麻樹脂と、THC(テトラヒドロカンナビノール)を含む大麻由来の混合物)

を含めている。娯楽用か医療用かを問わず、許可なく上記の草や製剤を使用・所持・売買・輸送することは禁止されている。

大麻所持でも最長で無期懲役、売買と製造には死刑が残る

罰則の重さは、行為ごとに異なる。大麻の保管、所持および輸送に関しては、いちばん重い刑が無期懲役である(刑法249条、250条)。売買に関しては、大麻樹脂30キログラム以上または大麻草150キログラム以上について、無期懲役または死刑を定めている(刑法251条5項)。

死刑が残るのは売買に関する刑法251条だけではない。違法な製造を罰する刑法248条5項にも無期懲役または死刑の定めがあり、大麻樹脂30キログラム以上の製造が対象となる。製品が固体・液体の薬物については、条文に基づき重さ以外の基準が問題になることもある。

見落としやすいのが、罰則を受ける基準となる数量が、大麻樹脂と草では1,000倍も違う点である。大麻草は1キログラムから処罰の対象となるのに対し、大麻樹脂はわずか1グラムを保管・所持しているだけで、同じ懲役刑の対象になる。濃縮された形状だと、ごくわずかな量でも刑事事件になり得る。

行為数量・態様の区分法定刑根拠条文
保管・所持大麻樹脂 1g以上500g未満懲役3年以上5年以下刑法249条1項b号
保管・所持大麻草の葉等 1kg以上10kg未満懲役3年以上5年以下刑法249条1項d号
保管・所持加重類型懲役15年以上20年以下または無期懲役刑法249条4項
輸送基本類型懲役3年以上7年以下刑法250条1項
輸送加重類型懲役20年または無期懲役(2025年に死刑廃止)刑法250条4項
売買基本類型懲役3年以上7年以下刑法251条1項
売買樹脂5kg以上30kg未満/草の葉等75kg以上150kg未満懲役20年または無期懲役刑法251条4項
売買樹脂30kg以上/草の葉等150kg以上無期懲役または死刑刑法251条5項
製造樹脂30kg以上(草の部位の区分なし)無期懲役または死刑刑法248条5項
違法な使用(一般)刑事責任を問われない場合警告または罰金100万〜200万ドン政令282/2025/NĐ-CP 30条1項a号

行為別・数量別の罰則整理(大麻関連のみ、2026年9月10日時点)
(出所:ベトナム政府官報 “Luật số 86/2025/QH15 sửa đổi, bổ sung một số điều của Bộ luật Hình sự“、”Nghị định số 282/2025/NĐ-CP” をもとにInfoBank作成)

同じ大麻でも、行為の種類によって刑の重さは大きく変わる。「罪になるかならないか」と単純にひとまとめにせず、刑罰の重さについてきちんと把握しておきたい。

2025年の刑法改正でも厳罰主義は変わらない

2025年6月25日、国会は刑法の改正法(法律86/2025/QH15)を可決した。麻薬の違法な輸送を含む8つの罪から死刑を外す内容となっており、同年7月1日から施行されている。

ただし、この法改正によって「罰が軽くなった」と解釈するのは適切ではない。同じ改正で、249条の基本となる刑は懲役1年以上から3年以上へ、250条と251条は2年以上から3年以上へ、それぞれ引き上げられた。

死刑の対象は狭まった一方で、大麻の所持・使用を含めた「軽い区分」では刑が重くなった。大麻に関する規制を全体的に眺めると、厳格化が進んでおり、大麻に対して厳しく罰する考え方は変わっていない。なお死刑そのものも完全になくなったわけではなく、改正後の刑法にはっきり残されている(刑法251条5項と248条5項)。

観光・ビジネス客にも適用される行政罰と刑事罰の線引き

大麻を使うという行為の扱いは、所持や売買とは構造が異なる。現行法では、使用に関する判断は3つの層に分かれている。

  • 所持・輸送・売買を刑法で処罰
  • 使用を行政罰で処罰
  • 使用を刑法で処罰

最初の分類は大麻の所持、輸送、ならびに売買である。これらの行為は、刑法249条から251条の刑事罰の対象になる。

2つめの分類は、一般の人による違法な大麻の使用である。仮に刑事責任を問われない要件であっても、行政罰を定める政令により、

  • 警告
  • 100万ドンから200万ドン(約6,100円から1万2,200円)の罰金

のいずれかが科される(政令282/2025/NĐ-CP 30条1項a号)。あわせて、麻薬防止法は、違法に大麻を使った人を1年間の管理・教育の対象とする(麻薬防止法120/2025/QH15 24条)。これは処罰ではなく予防のための措置と位置づけられており、外国人に適用されるかどうかは条文に書かれていない。

3つめの分類が、2025年7月1日に施行された刑法256a条(違法薬物使用罪)である。刑は懲役2年以上3年以下、同罪の再犯は3年以上5年以下となる。

この3つめの分類が対象とするのは、ベトナムの制度に基づいて薬物依存のリハビリを受けている人や、その後の管理下に置かれている人に限られる。前に有罪判決を受け、その前科が消えないうちに同じ罪をまた犯した場合もあてはまる。ただし、観光やビジネスで短期間訪れる人が当てはまることは、まず考えにくい。

しかし、3つめの分類に関する説明をパッと読んで「使っただけなら刑事罰にならない」と解釈するべきではない。大麻を使う場面では、通常その大麻を手元に持っている。持っている量が刑事罰の基準に届けば、それだけで懲役刑の対象になるおそれがある。しかも濃縮された大麻樹脂なら、その基準はわずか1グラムである。

外国人であっても、ベトナム国内での犯罪には原則として同じ法律が適用される。刑を終えたあとに国外追放が科されることもある(刑法37条)。

過去には、外国人に対して懲役および国外追放が確定した判決もある。ハノイ市人民裁判所は2023年4月17日、およそ3万グラムの大麻を運んだカナダ国籍の男性に、違法運搬の罪で懲役14年と刑を終えたあとの国外追放を言い渡し、判決が確定している(刑法250条3項c号)。

外務省も、「違法薬物の所持・使用は外国人でも厳しく罰せられる」と注意を促している。「観光客だから大目に見てもらえるよ」という通説に、根拠はない。

産業用ヘンプに残る法と実態のずれ

大麻は薬物としてだけではなく、繊維などの素材として用いられる、いわゆる産業用ヘンプとしても利用される。日本やタイをはじめ多くの国は、精神作用を引き起こす物質であるTHCの濃度で線を引き、濃度の低い品種を産業用として扱ってきた。

ベトナムには、THCに関する基準がない。公開されている法令を見るかぎり、濃度によって産業用ヘンプを除外する規定は確認できなかった。ベトナム北部の山岳地帯では、今も麻を織る暮らしが続いており、麻と日常生活を切り離すことは難しい。法律の建前と現地の実態がずれたまま残っているのが、ベトナムのヘンプをめぐる状況である。

法律上、大麻と産業用ヘンプの明確な区別がない

ベトナムにおいては現行の薬物リストに、THCの濃度によって産業用ヘンプを一般的に除外する規定が見当たらない(政令28/2026/NĐ-CP)。麻薬防止法やその施行令にあたる政令にも、除外の規定や濃度の基準は確認できなかった(法律120/2025/QH15、政令163/2026/NĐ-CP)。

違法となるかどうかの判断が難しいのは、できあがった繊維や個別の製品である。原料にどの部位を使うか、成分や用途、輸入の形態、許認可の有無などによって扱いが分かれる。企業が正面から産業用ヘンプに参入できる仕組みは、確認した限りでは整っていない。

日本では対照的な取り組みが進んでいる。2025年3月1日施行の法改正で、第一種大麻草採取栽培者が「Δ9-THCの濃度が0.3%を超えない大麻草」の種子などを使える制度を設けた。THCの濃度という数字で線を引いているかどうかが、産業として不安なく参入できるかどうかを分けている。

北部山岳地帯に残るモン族の麻織物

1999年に発表された研究は、伝統的なヘンプ栽培は中国との国境沿いにある北部山岳地帯に限られており、麻を織るのはモン族だと記録している。1998年の別の研究では、ラオカイ省・ライチャウ省・イエンバイ省を調査した。

伝統的な栽培・織物が今も続いていることは、2026年4月にベトナム通信社が伝えている。ハザン高原のルンタム村(現在はトゥエンクアン省)で、モン族の女性たちが糸を紡ぐところから藍で染めるところまでの工程を受け継いでいる。

1999年の論文は、ヘンプ繊維の産業そのものはほぼ廃れたと記す一方で、モン族ヤオ族による伝統的な衣服づくりが残っていることも書きとめている。こうした麻織物は、ベトナムの国営通信自身も、文化や観光の資源として紹介している。

北部山岳地帯で藍染めした布を広げて乾かす様子
(出所:Photo by Brian Snelson / CC BY 2.0Wikimedia Commons))

大麻は商業的な栽培を禁止されている一方で、伝統的な暮らしに根付く麻織物は現に続いているという、二つの顔である。麻を活用した繊維・素材の調達や製造を考える企業にとって、この線引きが参入を判断するうえでの難しいポイントとなる。

CBDから見るベトナム大麻規制の現在地

CBD(カンナビジオール)は、大麻草に含まれる成分のうち、精神作用をもたらさないものを指す。欧米では化粧品や食品に使われ、日本でも決められた条件の下で流通している。

ところがベトナムでは、この成分をどう扱うのかが法的にはっきりしていない。薬物リストにCBDという名前は出てこないものの、自由に売り買いできるわけでもない。数値の基準も、CBDのための許認可制度も見当たらない。輸入や販売、広告でCBDを使った製品を扱うリスクについて解説する。

成分や製品区分によって扱いが変わり得る

現行の薬物リストに、CBD(カンナビジオール)という成分名は見当たらない。一方で、THCを含む大麻由来の混合物は、法的な規制がもっとも厳しい区分に掲げられている。

純粋なCBDと、THCをわずかに含む製品(化粧品、食品、医薬品など)をひとまとめにして「合法」とも「違法」とも言えない。CBDを使った製品向けの許認可の仕組みも、合法とされるTHCの上限値も確認できない。

日本では、CBDやTHCの扱いについて細かく定められている。2024年12月12日に施行された改正法では、製品に残るΔ9-THCの限度値が定められた。油脂(常温で液体であるものに限る。)及び粉末は10ppm、水溶液は0.10ppm、それ以外は1ppmまではTHCが含まれていても規制の対象とならない。これらの基準を超える製品は「麻薬」にあたる。

中国では、使い道で線を引いている。国家薬品監督管理局が2021年5月26日付で、CBDやヘンプ種子油など大麻由来の4つの成分について、化粧品への使用を禁じた。

輸入・販売・広告のリスク構造

濃度や使用用途に関する基準がないという事実は、事業者にとって自由に活動できることを意味しない。むしろ、企業からすると事前に見通しを立てられない、という負担になる。

輸入は、原料に使う部位や成分、濃度によって、麻薬関連の法令に触れるおそれがある。販売でも、その製品がどの区分にあたるか、法律上の麻薬にあたるかどうかの判定を前もって固められない。例えばベトナムにも、化粧品の届出制度はあるが、CBDの含有を想定した許認可の仕組みではない。

広告事業も同じ状況に立たされている。どの規制が適用されるかは、製品の区分によって決まる。そのため、製品の区分が定まるまでは、広告でどう説明できるかも決まらない。CBD成分を打ち出すための広告の基準も確認できなかった。

産業ヘンプ事業への参入を検討するなら、扱う製品の原料部位・成分・用途をまず定めて、広告の表現まで含めて現地の弁護士と所管の当局に確かめる、という流れになる。

タイの大麻解禁と再規制から得られる教訓

ベトナムの規制が厳しいのかどうかは、ベトナムの様子を見るだけでは測れない。近隣にあるタイや、日本など他の国を並べてみると立ち位置がはっきりする。

なかでも参考になるのがタイの3年間であろう。アジアで最初に、大麻を犯罪として扱わない国になりながら、わずか3年で販売の規制に戻した。大麻規制の制度を緩めると何が起きるのかを、実例として示している。

この記事ではタイがたどった道筋を追い、ベトナム・タイ・日本の3国を比べつつ、ベトナムの大麻に対する厳しい取り組みが変わらない理由を見ていこう。

タイは合法化から3年で事実上の再規制へ

タイは2022年に大麻を麻薬リストから外し、アジアで初めて大麻を犯罪として扱わない国になった。しかし2025年にはこの方針が改められる。2025年6月26日に施行された新しい命令が、処方箋なしの大麻販売を禁じ、花蕾を管理対象のハーブとして改めて指定した。

罰は禁錮1年以下または罰金2万バーツ以下(約9万3,000円)、あるいはその両方である。これは2025年の命令で新たに設けられたものではない。根拠は1999年のタイ伝統医療知識保護促進法78条で、2022年6月に指定されてから変わっていない。

2025年に再び大麻が規制されると、大麻の市場は明らかに小さくなった。タイ保健省公表した値では、累計で登録された18,517店のうち、

  • 2025年に更新されず閉店したものが7,131店
  • 残っているのは11,386店

だった(タイ保健省伝統・代替医療局、2026年4月22日)。同局は許可をとった稼働している店舗を公開データベースでも示している。

項目ベトナムタイ日本
大麻の法的位置づけ薬物リスト(政令28/2026/NĐ-CP)の最厳格区分に大麻草・大麻製剤を掲載2022年に麻薬リストから除外。花蕾は管理対象ハーブに指定麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」として施用を禁止(2024年12月12日から)
販売刑法251条の犯罪。最高刑は無期懲役または死刑処方箋なしの販売を禁止(2025年6月26日施行)嗜好目的・無免許の販売は禁止。大麻草由来医薬品は麻薬として免許・処方等の管理下で流通し得る。残留限度値以下の製品は麻薬規制の対象外(製品区分ごとの一般法令は適用)
産業用ヘンプの栽培THC濃度による一般的な除外規定は確認できず2022年6月の麻薬リスト除外時、タイ食品医薬品局は届出のみで栽培でき許可は不要と説明。2026年時点の制度は一次資料で確認できず第一種・第二種の免許制。第一種はΔ9-THC 0.3%以下の大麻草(2025年3月1日から)
製品中のTHCの数値基準確認できず本稿では確認していない残留限度値を設定(本文参照)
ベトナム・タイ・日本の規制の比較(2026年9月10日時点)
(出所:ベトナムは政府官報掲載の各法令、タイはAP “Thailand starts banning the sale of cannabis without a prescription” ほか、日本は厚生労働省「令和7年3月1日に『大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律』の一部が施行されます」。タイの産業用ヘンプ栽培はタイ食品医薬品局麻薬統制部 “รายงานประจำปี 2565 กองควบคุมวัตถุเสพติด“。バーツの円換算は欧州中央銀行の2026年9月9日付参照レートから算出したクロスレート(1バーツ=4.66円)による目安)

ベトナム・タイ・日本の3つの国は「大麻規制の厳しさ」が異なるのではなく、基準となる線の引き方が違うだけだ。日本やタイは濃度や用途でラインを引き、ベトナムは公には基準を定めていない。原料を調達したり製品を輸出したりするときは、相手国にはっきりした基準があるかどうかで、参入に向けたハードルの高さは変わってくる。

ベトナムでは、2025〜26年にかけて、刑法や薬物リスト、麻薬防止法とその施行令など、さまざまな制度が続けて変更された。ベトナム政府は、大麻規制の整備と厳格化へと向かっているように見える。公開されている資料を見る限りでは、娯楽用にも産業用にも、大麻の利用解禁をうかがわせる方針は見当たらない。

ベトナムにおける大麻規制の今後の動向は

ベトナムで大麻が解禁されるような動きは今のところ見当たらない。それでも、この分野は今後も注目すべきトピックである。

見ておくべきなのは、大麻規制が解禁されるかどうかではない。産業用ヘンプやCBDの扱いにルールができていくか、そして日本側の法改正が現地に住む日本人に何をもたらすかである。以下では、その3つを順に見ていく。

企業が追うべきはルールの変化のほう

ベトナムでの大麻・ヘンプ産業に関心を持つならば、注目すべき論点は以下の3つである。

  • ヘンプ繊維や種子を産業として使う道にルールができるか
  • CBDについて、成分と製品区分ごとの扱いが明確になるか
  • 日本側の制度変更が海外に住む日本人に何をもたらすか

最後の点について補足しておきたい。日本は少しずつ、大麻規制に関する制度を変えてきた。2024年12月12日に、大麻を不正に施用する行為が罪の対象となり、大麻取締法が「大麻草の栽培の規制に関する法律」へ改められたことも効果を生み出した。そして先ほど紹介した、2025年3月1日の栽培規制の変更である。

日本の法律に基づく、国外での行為の扱いも押さえておきたい。国外犯の対象として挙げる罪に上で述べた施用罪は含まれていないため、海外で使用しただけを理由に帰国後に処罰されることはない。ただし所持・譲受け・譲渡しはいずれも処罰の対象となる。

ベトナムにおける規制は一枚岩ではない。所持・輸送・売買は刑事罰、一般の人による違法な使用は刑事責任を問われないかぎり行政罰、リハビリ中の元使用者や再犯者による違法な使用は刑事罰と、扱いが複雑に分かれている。そしてなにより、ヘンプ繊維やCBDは、法的な扱いを確定できない領域として残っている。

禁止されている行為と、グレーゾーンになっている領域。この境界線をどこに引くかを見極めることが、日本企業やベトナム在住者にとってのポイントになる。

※文中や表中の数量は刑事罰の区分を説明するものであり、基準を下回る量の所持・輸送・売買等であっても違法あるいは行政処分を受ける対象となり得ます。

ベトナム経済メディアInfoBank 記者(Journalist)

新居 理有

Real Arai

龍谷大学、経済学部准教授、及び財務省財務総合政策研究所客員研究員。

京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。財政政策・財政学・公共経済学・マクロ経済学を専門とし、2023年4月より龍谷大学に着任。

財政やマクロ経済の分野を中心に研究・教育活動に取り組んでいる。

参考資料

※媒体名・著者名の五十音順。日本語以外の名称は、かっこ内のカタカナ読みで配列した。