東京都内でベトナムをテーマに経営者らが集う「ベトナム交流会」が、発足から1年余りで着実に参加者の輪を広げている。現地では日系の交流会も多いが、日本国内でベトナムビジネスを語り合える場は限られている。InfoBank編集長の三浦が、発起人の安岡桜子氏と現在の運営を担う糸隼人氏の両名にインタビューし、立ち上げの経緯や参加者の顔ぶれ、今後の構想を伺った。

ベトナム交流会 発起人
安岡 桜子
株式会社ikiteru代表取締役。葬儀業界を中心に、企業のブランディング・マーケティングを支援。業界の発展と新たな市場創出を目指し、ベトナムをはじめとする海外との企業交流や、日本企業の海外展開につながる取り組みを推進している

ベトナム交流会 運営
糸 隼人
DONE代表。日本企業のベトナム進出・事業連携を支援し、ベトナム在住時の1年間で、200人以上の経営者をホーチミンでアテンド。現地企業とのネットワークを活かし、企業視察や交流会の企画、商材開発、人材活用など、日本とベトナムをつなぐ事業を展開している。
立ち上げの原点は2025年春、ホーチミンで受けた衝撃
三浦: 交流会を立ち上げたきっかけから伺えますか。
糸: 始まりは2025年4月、ホーチミンでした。
安岡: 葬儀業界のベトナム進出に関わる仕事で、ホーチミンを訪れたのがきっかけです。東南アジアを訪れるのは初めてで、正直なところ「発展途上国」というイメージのままでした。ところが実際の街は想像以上に発展しており、人口の厚みや消費の勢い、ホテルや飲食のサービス水準が上がり続けている様子に、これから伸びていく国の力強さを感じました。
三浦: 欧州など他の地域も訪れてきた中で、ベトナムには何が違うと感じましたか。
安岡: 欧州の魅力が歴史ある街並みや建造物にあるとすれば、ベトナムの魅力はこれから形づくられていく発展性にあります。成長の始まりに立ち会っているような感覚でした。同時に、日本の経営者の多くは、まだ「日本の方が進んでいる」という古いイメージのままベトナムを見ているのではないかと思ったんです。
三浦: その実感が、交流会につながったわけですね。
安岡: 帰国後、周囲にベトナムの話をしていたところ、知人からベトナム料理店でのランチに誘われました。せっかくならベトナムに関心のある人を何人か集めようと声をかけたのが最初です。利益を目的に始めたわけではなく、ベトナム料理を囲んで気軽に話せることを大切にしました。セミナーや名刺交換会ではなく食事会という形にしたのも、参加のハードルを下げたかったからです。
「ベトナム」の一言が業種や規模を越えて人をつなぐ
三浦: 実際に始めてみて、反響はいかがでしたか。
安岡: 周囲にこれほどベトナムと関わりのある人がいたのかと驚きました。普段の業務ではまず接点のない業種や規模の会社の方とも、ベトナムという共通項があるだけで自然に話が始まり、次の紹介へとつながっていきます。大手広告代理店の方とも、ベトナムという接点がなければ出会うことはなかったと思います。
参加者に共通するのは、ベトナムの成長性にいち早く着目している点です。自ら海外に足を運ぶ行動力があり、事業の仕組み化が進んでいる経営者が多い。人材面の体制も整っているため、結果として一定以上の規模の会社が多く集まる傾向があります。
三浦: ベトナムへの関心を入り口に、ビジネス上の交流にも発展していく。テーマとして非常に求心力がありますね。

食事会と招待制のビジネス交流会、二本立ての運営
三浦: これまでの開催実績を教えてください。
糸: 食事会を6回、ビジネス交流会を1回開催しました。食事会の第7回とビジネス交流会の第2回も、すでに日程が決まっています。
三浦: 回を重ねる中で、会の形も変えてこられたのですか。
安岡: 当初は食事会のみでしたが、SNSで告知するうちに参加者層が大きく広がり、大企業の方からベトナム料理を楽しみたい一般の方までが同じ場に集まるようになりました。そこで目的に応じて会を分けています。食事会には今もベトナム旅行が好きな経営者などが気軽に参加しており、ビジネス交流会は、名刺を交わしたことのある信頼できる方の紹介に限る招待制にしました。
三浦: 会を分けた理由はどこにあるのでしょうか。
安岡: ベトナムビジネスの分野では進出支援をうたう事業者も増えていますが、情報の確かさにはばらつきがあります。私たちの場で出会った経営者同士が、根拠の乏しい話をきっかけにトラブルになることは避けたい。そのため、ビジネス交流会では、ご紹介や事業実績を糸さんと確認し、安心して交流できる方にお声がけしています。
三浦: 海外ビジネスでは、情報がファクトに基づいているか、相手が信頼できるかが何より重要です。参加者を見極める仕組みは、会の信頼性を支える根幹だと思います。
中小企業の初めての海外進出先としてのベトナム
サービス業の参入が増え始めたベトナム市場
三浦: 参加者の業種や企業規模に、どのような傾向がありますか。
安岡: 日本国内で一定の事業規模を持ち、これからベトナムに参入しようという会社が多いですね。人口ボーナスがあり消費者の多いベトナムは、飲食や消費関連のサービスを持つ企業にとって有力な選択肢です。私の本業である葬儀業界を含め、ホテルや飲食といったサービス業で参入を検討する動きが増えていると感じます。
三浦: 同感です。大手企業の進出・投資はひと通り進み、今後は消費財、サービス、飲食、食品の分野で中堅・中小企業の進出が広がる局面です。一社ごとの規模は小さくても、全体のボリュームは大きい。2026年から2027年にかけての進出は、まさにこの層が中心になると見ています。
安岡: 私の人脈で最も多いのは中小企業の経営者で、その盛り上がりは肌で感じています。
三浦: 私自身、市場調査を依頼いただくのは比較的規模が大きい企業が中心でしたが、最近はミドルサイズの企業からの関心が高まっています。ベトナムに古いイメージを持つ企業には、まだ認識をアップデートする余地があると感じます。
交流会から生まれた視察ツアーと東京開催の価値
安岡: 大手企業にとってベトナムは複数ある進出先の一つですが、中小企業では海外進出自体が初めてという経営者も少なくありません。「単独で現地を見に行くのは不安なので、一緒に視察したい」という声を受け、交流会をきっかけに糸さんと海外視察を3回ほど実施しました。
三浦: 交流会が、潜在的な進出ニーズを顕在化させているわけですね。加えて、東京で開催していることにも大きな意義があります。現地には日系の交流の場が多くありますが、日本国内、とりわけ東京でベトナムビジネスを語り合える場は限られています。日本にいながら情報と人脈を得られる点は、これから進出を検討する企業にとって貴重です。

利益を目的としない運営と口コミで広がるコミュニティ
三浦: 運営面で意識していることはありますか。
糸: ベトナムをきっかけに、新しい出会いを楽しんでいただくことを大切にしています。第2回に参加した方が第6回に再び来られるなど、それぞれのタイミングで参加してくださっています。会場に変化をつけるなど、美味しい料理と交流を楽しめるよう、一回ごとの企画を工夫していきたいと考えています。
安岡: リピートを前提にした設計はしていません。あくまで「初めまして」の出会いの場で、そこでつながった参加者同士が、別の場で関係を深めていることも少なくありません。食事会とはいえコミュニティ運営なので、事前の連絡など相応の手間もかかります。開催は2〜3カ月に1回のペースとし、無理に規模を追わず、長く続けることを重視しています。
三浦: 売上やKPIを先に置くと、場の自由さや本質が失われやすいものです。利益を追わない運営だからこそ、出会いの質が保たれているのだと思います。参加費も、気軽に参加できつつ参加者の質を保てる水準に設定されている印象です。
安岡: Facebookグループも運営しており、1年ほどで606人まで増えました。参加には「どこで知ったか」「なぜ参加したいか」など3問ほどへの回答をお願いしています。広告は一切出しておらず、口コミと紹介だけで広がっています。
三浦: 広告なしで600人を超える規模になっているのは、それだけ潜在的な関心が大きいことの表れですね。
ミニ講演、地方開催、採用支援へ広がる次の構想
講演や採用の場を加え、会の中身を厚くする構想
三浦: 今後の展開について、構想を聞かせてください。
糸: 食事や交流を楽しんでいただくことに加えて、1〜2名の方に5〜10分程度、ベトナムの最新動向や現地の文化を紹介していただく時間を設けたいと考えています。食事を楽しみたい方も、ベトナムについて学びたい方も、それぞれの関心に合わせて参加できるよう、講演がある回は事前にご案内するつもりです。参加された経営者からは、在日ベトナム人経営者の参加や、ベトナム人材の採用につながる場をつくってほしいという要望もいただいています。
安岡: 海外視察は年間計画を立てて継続し、海外でのベトナム交流会の開催も視野に入れています。対象をタイなど東南アジア全体に広げる案や、ビジネス交流会を会員制にして事業を共に進めるコミュニティとして強化する案もあります。ただ、まずは「Facebookグループの登録者1,000人」を目標に、裾野を広げることを優先したいと考えています。
三浦: 日本で活躍するベトナム人経営者もいますし、採用にも確かなニーズがありそうです。成長のシナリオが幅広く描けますね。
横浜、大阪、そして全国へ広がる開催地の可能性
三浦: 地方での開催はいかがでしょうか。地方の中小企業は、実際に顔を合わせて話すことで動き出すケースが多く、商工会議所などと連携した視察につながる可能性もあります。
安岡: 実績を積めば、自治体や大阪・名古屋などにも展開できると考えています。まずは横浜での開催を検討しています。神奈川県はベトナムとの商談会などに積極的に取り組んでおり、関心の高い企業が多いと見ています。どの地域で開催するにしても、根本にあるのは、美味しいベトナム料理を囲みながら語り合うという原点です。
糸:次回は12月、第7回としてクリスマスパーティーを開催します。食事を楽しめる気軽さはそのままに、ベトナムの今を知る機会や、信頼できる相手と出会える場として、一回ごとの内容を充実させていきたいと考えています。
第7回ベトナム交流会(2026年12月)開催概要
次回の第7回ベトナム交流会は、2026年12月にクリスマスパーティーとして開催される予定だ。前回の第6回は、2026年8月20日に東京・銀座のベトナム料理店で行われた。
第7回ベトナム交流会(2026年12月)
日時:2026年12月3日(木) 19:00〜21:30
場所 :モンスーンカフェ 恵比寿/ Monsoon Cafe Ebisu
東京都渋谷区恵比寿4丁目4−6 MARIX恵比寿ビル 2F
参加費:8,000円(お釣りのないようにお持ちください)
申し込みリンク https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfW1LqUuNfJuOj0-rC3moA9ddbwgMSisI-1O8AV0LHnywbRLQ/viewform?pli=1

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長
三浦 賢弥
KENYA MIURA
山形県山形市出身。筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。
ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBaseを創業。代表取締役に就任。
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