「決算と同じ速さでCO2排出量を報告する」——そんな要求が、国際的な開示ルールの変化を通じて現実になりつつある。かつては余裕があれば取り組むテーマだったものが、いまや財務情報と並ぶ報告事項へと位置づけを変え、日本の本社やグローバルなサプライチェーンを経由してベトナム市場にも波及し始めている。しかし現地に目を向けると、サステナビリティを専任で担う部署も、実務で使える排出係数のデータベースも、十分に整っているとは言い難い企業が少なくない。
こうしたギャップに向き合っているのが、CO2排出量の算定・可視化プラットフォームを提供する株式会社ゼロボードだ。今回InfoBankでは、同社のタイ法人代表を務める鈴木慎太郎氏と、カスタマーサクセス本部企画室のファム ザー ヒュイ氏に話を聞いた。東南アジア事業を統括する鈴木氏、ベトナム市場を担当するヒュイ氏という二つの視点から、現地の規制動向や顧客の課題、ベトナムで進める提携の狙いを語ってもらった。
(お話を伺った方)

脱炭素の国際市場とCO2排出量開示義務化
取材の出発点として両氏が挙げたのが、企業を取り巻く開示ルールと国際社会の動きだ。国際会計基準(IFRS)財団は国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立し、2023年6月にIFRS S1(サステナビリティ関連財務情報開示の全般的要求事項)とS2(気候関連開示基準)を公表した。
2024年からは、それまで気候関連開示の事実上の標準だったTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みも引き継いでいる。いまは各国が自国の開示規制にこれを取り込んでいく段階で、日本でもSSBJ基準が公表され、有価証券報告書での義務適用に向けた制度整備が進む。

実務にとってとりわけ重要であるのが、「サステナビリティ関連の財務開示は、関連する財務諸表と同時に報告する」という要求だ。つまり、決算が締まってから数カ月かけてCO2排出量を集計する、という進め方ではもう間に合わない。決算から報告までの短い期間で、速やかに、しかも正確に算出できる体制を、あらかじめ用意しておく必要がある。
ここで重要なのは、この要求が自社単体では完結しないという点だ。連結子会社を含むグループ全体の排出量に加え、スコープ3としてサプライチェーンの上流・下流の排出量まで集める必要がある。結果として、開示義務を直接負う日本の親会社や欧州のバイヤーが、その先にいるベトナムの製造拠点や取引先にデータの提出を求める、という連鎖が生まれる。
ベトナムの現地法人にとってCO2排出量の算定が避けられない実務になった背景には、ベトナム国内の規制以上に、この国際的なルール変更の波及がある——両氏はそう説明する。

ゼロボードとは?ー温室効果ガス(GHG)排出量プラットフォーム
ゼロボードは2021年、東京で設立された。2023年にはタイに「Zeroboard (Thailand) Co., Ltd.」を設立し、ここを東南アジアの統括拠点と位置づけている。タイを重点市場としつつ、そこを起点にベトナム、インドネシア、フィリピンへと展開しているという。
主力サービスは社名と同じ「Zeroboard」。温室効果ガス(GHG)排出量の算定・可視化を行う、データ収集・開示支援のプラットフォームだ。鈴木氏によれば、企業単位のスコープ1・2・3の開示だけでなく、製品単位の算定(CFP:カーボンフットプリント)にも対応する。
たとえば「このペットボトルを欧州に輸出したとき、CO2排出量はどのくらいか」「製造工程ではどれだけ出ているか」——こうしたサプライチェーンの中での算定・可視化ができるという。導入実績はグローバルで約1万5,000社、東南アジアでは400社以上にのぼる。

使い方はシンプルだ。工場の電力使用量や燃料使用量といった実データ、あるいは会計データや調達データを入力すると、計算とビジュアライズはプラットフォーム側が引き受け、スコープ1・2の算出結果を開示できる形にまで仕上げてくれる。報告のフォーマットは制度で定められているため、「データを入れてクリックすれば報告用レポートが出てくる」状態を目指しているという。
機能面も充実している。自社内やグループ企業間での承認ワークフローに加え、管理者・一般・入力担当者・閲覧の4種類の権限設定を備えるなど、ガバナンス強化を見据えたプロダクト設計となっている。GHG以外の環境項目も、同じプラットフォーム上で一元管理できる。また、「Zeroboard」は、第三者機関よりISO14064-3に準拠した検証手順での妥当性確認を受けており、GHG排出量算定において信頼できるプラットフォームだ。
では、自前のエクセルで対応する場合と何が違うのか。鈴木氏が決定的な差として挙げたのは、CO2排出量の計算フレームワークや排出係数といった土台の情報を、プラットフォーム側が定期的にアップデートし続けるという点だ。

CO2排出量算定で企業が直面する課題
脱炭素対応を後押しする動機
そもそも、なぜベトナムの企業はCO2排出量に取り組み始めるのか。ヒュイ氏によると、その背景には複数の力学が重なっているという。まず大きいのはベトナム政府からの規制要請で、2024年8月に公布された「温室効果ガス排出目録の実施が義務付けられる分野・排出施設のリスト」(Decision 13/2024/QĐ-TTg、通称「決定13号」)が代表例だ。
また、サプライチェーン上のバイヤーからの要請も、企業を動かす大きな要因の一つだ。輸出指向型の産業が多いベトナムでは、取引先である欧州や日本のバイヤーから排出量データの提出を求められるケースが増えている。政府からの規制、そしてこうした取引先からの要請は、外資系(FDI)企業に限らず、ベトナムに拠点を置く企業全体に共通してかかる圧力だといえる。
これに加えて、外資系企業の場合は日本本社への報告という事情も無視できない。連結子会社を含むグループ全体で「20XX年までにどれだけ削減する」という目標を掲げている以上、製造拠点として工場を持つベトナム法人も、年間のエネルギー使用量や排出源の内訳、再エネ比率、削減の進み具合などを本社に報告する必要がある。

CO2排出量算定を難しくする3つの要因
三方向から要請を受けながら、現場では次の三つの課題が同時に立ち上がると鈴木氏は指摘する。

① ノウハウと人材が足りない:日本国内の上場企業なら、サステナビリティ推進部のような専任部署があり、開示やレポート作成の前提知識がまったくない、という会社はほとんどない。ところが同じグループのベトナム法人を見ると、そもそもサステナビリティ部門が存在しないこともある。担当が決まっていないため、安全管理部のスタッフ等に任され、「計算はどうやるのか」「どのデータを見ればいいのか」という課題が浮き彫りになる。
加えて、日本語・英語・ベトナム語など複数の言語でのやり取りが必要になる場面も多く、本社や海外拠点が持つノウハウを現地スタッフへスムーズに移転する際の壁になっているという。
② データを集めるのが煩雑:スコープ1・2は自社の工場や設備の排出量だが、それでも集めるべきデータは幅広い。大手になればハノイ本社、ホーチミンの工場、倉庫と拠点が複数あり、どこから何を集めるかという時点で作業が膨らむ。
スコープ3は取引先からの収集になるため、難度はさらに上がる。エクセルを配って回収し、転記していく。そのような運用になりやすい。サプライヤー側がまだ算定していない、算定していてもデータを出してもらいにくい、といった状況が重なりやすく、結局は個社の実データではなく、業界平均値などの二次データを参照して計算せざるを得ないケースも多いという。
③ 制度が頻繁に変わる: ベトナムでは政令や決定が次々と出るため、以前の規制に合わせて作り込んだエクセルが、計算方法や開示範囲の変更で使えなくなることがある。加えて輸出型企業が多いベトナムでは、取引先である欧州の規制への対応も並行して求められる、というのが両氏の見立てだ。
この3点に対して、Zeroboardはデータ収集の効率化と、計算方法・排出係数データベースの継続的なアップデートで応えているという。

CO2排出量をめぐるベトナムの法規制動向
ベトナムのCO2排出量開示・法的根拠
ベトナムの制度について、まず土台になっているのが、政令6号(Decree 06/2022/NĐ-CP、2022年1月公布)「温室効果ガス排出削減およびオゾン層保護に関する規定」だ。
GHG排出量の削減とオゾン層保護について定めたもので、企業に求められる報告サイクルもここで規定されている。頻度は2年に1回で、2024年実績分を2025年3月に提出し、以降は2026年実績分を2027年3月に提出するというように、2年ごとのスケジュールで報告が義務づけられている。
この政令6号にもとづき、実際にどの事業所が報告義務を負うのかを具体的に指定しているのが、決定13号(Decision 13/2024/QĐ-TTg、2024年8月公布)「温室効果ガス排出目録の実施が義務付けられる分野・排出施設のリスト」である。大電力消費型を中心とした事業所が登録対象に指定され、CO2排出量の報告が義務づけられた。
その後、2026年8月10日には決定13号を改正する「42/2026/QĐ-TTg」が公布され、GHGインベントリの実施対象となる企業・施設数は2,166から2,441へと拡大している。

対象は「企業」ではなく事業所単位でカウントされており、大手では複数の事業所がそれぞれ別に対象となるケースもある、とヒュイ氏は説明する。
現時点で義務づけられているのはスコープ1・2の開示に加え、削減計画の策定・提出だ。対象となる事業所は、事業所レベルの温室効果ガス排出削減計画を策定し、2025年12月31日までに提出することが求められていた。一方でスコープ3については、まだ通達が出ていないという。
対象事業所のリストは段階的に見直されており、今後は排出量の報告に加えて、削減計画書の提出も求められる方向にあるとのことだ。もっとも、自社が開示対象リストに入っていることを直前まで知らない企業も少なくないという。
ベトナムCO2排出量開示に関する主要法令(政令6号・決定13号)
| 項目 | 政令6号 | 決定13号 |
|---|---|---|
| 正式番号 | Decree 06/2022/NĐ-CP | Decision 13/2024/QĐ-TTg |
| 公布 ※なお、政令6号は2025年6月公布の政令119号(Decree 119/2025/NĐ-CP)により一部改正されている。 | 2022年1月 | 2024年8月 |
| 日本語タイトル | 温室効果ガス排出削減およびオゾン層保護に関する規定 | 温室効果ガス排出目録の実施が義務付けられる分野・排出施設のリスト |
| 発出主体 | 政府(Nghị định) | 首相(Quyết định) |
| 役割 | 制度の土台。GHG削減とオゾン層保護の枠組み、報告サイクルを規定 | 政令6号に基づき、報告義務を負う事業所を具体的に指定 |
| 対象単位 | 企業全般(報告制度の枠組み) | 事業所単位(大電力消費型中心、2000事業所超) |
| 報告頻度・時期 | 2年に1回(2024年末→2025年3月→2027年3月) | 対象リストは段階的に見直し |
排出量取引制度の導入と省庁再編の影響
もう一つの大きな動きが、炭素排出権取引(ETS)の制度化だ。政令29号(Decree 29/2026/NĐ-CP、2026年1月公布)「国内炭素取引所の運用に関する政令」で取引所の運営インフラが定められた。2025〜2026年の試行段階における排出枠の割当対象は、火力発電・鉄鋼・セメントの3業種となっている。
制度を運用する側にも変化がある。従来、脱炭素や排出量報告を管轄していたのは天然資源環境省だったが、省庁再編により農業農村開発省が統合されて農業環境省となった。
上場企業については、通達96号(Circular 96/2020/TT-BTC、2020年11月公布、2021年1月施行、その後の改正を含む。最終改正は通達08/2026/TT-BTC)によって、年次報告書の中でESGデータを報告することが求められている。ただし実際の運用や浸透は、まだこれからの段階だという。
制度と並んで実務を左右するのが排出係数だ。日本では算定に使う係数がすでに公開されており、企業はそれを参照しながら進められる。一方ベトナムにも排出係数はあるものの、そのまま実務に使えるかというと課題が残る。スコープ3までカバーする係数は、まだ整備されていない。
制度が求める水準と、それを支えるデータ基盤との間には、当面ギャップが残る状況だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Nghị định số 29/2026/NĐ-CP(政令29号) |
| 日本語訳 | 国内炭素取引所に関する政令 |
| 公布日 | 2026年1月19日 |
| 施行日 | 2026年1月19日(公布と同日施行) |
| 発出機関 | ベトナム政府(Chính phủ) |
| 目的 | 温室効果ガス排出枠(排出量取引の枠)および炭素クレジットの登録・コード付与・所有権移転・保管(カストディ)・取引・決済に関するルールを定める |
| 運営体制 | ・ハノイ証券取引所(HNX):炭素取引システムの組織・運営 ・ベトナム証券保管振替機構(VSDC):保管・決済業務 ・ベトナム証券取引所(VNX):取引の監督 ・農業環境省:国内登録システムの管理、排出枠・炭素クレジットへのコード付与 |
| 対象となる商品 | 温室効果ガス排出枠、および取引適格と認められた炭素クレジットの2種類 |
| 位置づけ | Decree 06/2022/NĐ-CP(GHG排出削減・オゾン層保護に関する政令、2025年6月公布の政令119号(Decree 119/2025/NĐ-CP)による改正を含む)を土台とし、炭素市場創設に関する首相決定232号(Decision 232/QĐ-TTg、2025年1月)を受けて、取引インフラを具体化する政令。 |
ベトナムで広がる脱炭素パートナーシップ
サプライチェーン単位で広がる脱炭素支援
同社が取るのは、個社にSaaSを売る一般的なモデルではなく、工業団地・経済特区・政府・銀行といった、企業と日常的に接点を持つ主体と組んで面で獲りにいく「1対N」のアプローチだ。同じモデルはタイ等でも展開されているが、ベトナムでは工業団地・IT大手・金融と、提携先の種類が幅広い。
この進め方が効く理由として鈴木氏が挙げたのが、営業効率と啓発の両面だ。例えば、工業団地はテナントへの強いコネクションを持つため、個別アプローチより効率的だという。同時に、いきなり自社サービスを売り込むのではなく、脱炭素の基本を伝えるセミナーから入る点も特徴的だ。

工業団地を起点に広がる脱炭素支援
ベトナムでの1対Nの起点となっているのが、ドンナイ市のLong Duc(ロンドゥック)工業団地との脱炭素化に関する覚書だ。ゼロボードが提供する温室効果ガス排出量の可視化・削減支援クラウドサービスを活用し、同工業団地内企業の脱炭素化支援を協働で推進するもので、工業団地単位でのGHG可視化の実現、サプライチェーン全体の脱炭素化支援、企業競争力・輸出競争力の向上が狙いとして掲げられている。
同工業団地には輸出指向型の製造業が多く入居しており、グローバルサプライチェーンの中でバイヤーから排出量を問われたときに応えられる状態をつくることが重要になる、とヒュイ氏は説明する。ヒュイ氏自身が実際に現地に赴き、入居企業を集めて講師として研修も実施しており、将来的には同じ投資家による他の工業団地への展開や、脱炭素ソリューションのマッチングといった総合支援への拡張も検討されている。

IT大手と築くCO2排出量データ連携
ITの領域では、ベトナム最大手の通信・IT企業FPT Corporationの子会社であるFPT ISと、脱炭素化支援に関する業務提携覚書(MOU)を締結している。両社はそれぞれGHG排出量の算定・可視化サービス「Zeroboard」と「VertZéro」を提供しており、この提携によって両サービス間でGHG排出量データの相互連携が可能になる。
ここで興味深いのは、同じ領域のサービスを持つFPT ISを競合と捉えていない点だ。FPTのサービスを使う企業と、Zeroboardを使うバイヤー企業との間でデータが行き来する状態をつくることは、両社のユーザーにとっての利便性向上につながるという意味で価値がある、というのが鈴木氏の説明だ。ASEAN市場における相互展開も視野に入っているという。

CO2排出量削減とKPIを連動するサステナブル融資
そしてもう一つの軸が、金融からのアプローチである。ベトナム大手商業銀行であるベトナム産業貿易銀行(VietinBank)と連携し、同行の投融資先企業向けにサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を提供する取り組みだ。SLLは、企業が掲げるサステナビリティ目標の達成度と融資条件を連動させる金融手法で、世界的なESG・脱炭素の潮流を受けて金融機関の間で注目が高まっている。
通常の融資とは異なり、SLLではCO2排出量の削減目標などのKPIを設定し、達成度に応じて金利が変動する仕組みになっている。この枠組みを機能させるには、KPI達成状況を客観的かつ継続的に測定・管理できる体制が不可欠だ。
そこでゼロボードは、ベトナムのコンサルティング企業EGPおよびCGSと連携し、それぞれが担う枠組み設計・評価ロジック構築、ローンフレーム全体の構築と組み合わせる形で、GHG排出量および関連KPIの算定・管理、進捗モニタリング、データの透明性確保、第三者保証対応までを担い、複数企業のKPIを一括管理するデータ基盤としての役割を果たしている。
同社は今後、トランジションファイナンスなど他の環境関連金融商品への展開も視野に入れており、既存の脱炭素経営支援の取り組みと連動させながら、アジア全域の脱炭素移行をデータ基盤の側面から支えていく方針だという。

ベトナムの脱炭素市場の今後の展望
ベトナム市場に対するスタンスとしては、先述した決定13号の対象企業が拡大を続けていることに加え、証券取引所の再編(上場企業のホーチミンへの集約)といった動きもあり、ベトナムの上場企業も今後ビジネスチャンスになると考えられる。
政策上のステップバックや揺り戻しはあり得るものの、流れ自体が止まることはないというのが基本的な見立てだ。経済成長率と市場規模を踏まえれば、ASEANビジネスにおいてベトナムは避けて通れない存在だという位置づけである。
商材ポートフォリオの拡大も視野に入っている。CO2排出量データの管理にとどまらず、SAQ(自己評価質問票)型のプラットフォーム展開を目指す。これは、サプライチェーン内の企業に対して「強制労働はないか」「コンプライアンスを重視しているか」といった項目のアンケートを配布・収集・管理する仕組みだ。背景には、エネルギー高騰や供給停止リスクなど、サプライチェーン全体のリスク管理ニーズの高まりがあるという。
ベトナムはグローバルサプライチェーンとの結びつきが強く、特に欧州から注目されている市場である。そのため、こうしたサーベイ・データ管理のニーズは東南アジアの中でも大きいのではないか——そうした見立てから、ベトナムで扱う商材のポートフォリオを広げていく方針が示された。

ベトナムの脱炭素、動く制度と広がる支援
今回の取材を通じて浮かび上がったのは、ベトナムにおけるCO2排出量の算定・開示が、政令6号と決定13号を軸に義務化のフェーズへ入り、政令29号によるETS導入で次の段階へ進もうとしている構図である。同時に、省庁再編を受けて報告頻度や報告先が変わる可能性も残る。制度は動き続け、排出係数などの算定インフラはまだ追いついていない。この「動き続ける制度」と「現場の課題」の間を埋める役割が、いま求められている。
鈴木氏とヒュイ氏が語ったベトナムでの1対Nのアプローチは、単なる営業効率の話にとどまらない。工業団地、IT大手、金融という、企業と日常的に接点を持つ主体を経由することで、算定ノウハウそのものを面的に広げようとする設計になっている。ベトナムでビジネスを行う日系企業にとっても、CO2排出量への対応は本社報告とバイヤー対応の両面から避けられないテーマとなる。制度の変化を追いかけ続ける体制をどこに持つのか。その判断が、今後の競争力を左右することになりそうだ。

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長
三浦 賢弥
KENYA MIURA
筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。
ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。
