ベトナムの電動バイク市場が急拡大するなか、車両の安全基準そのものを見直す動きが本格化してきた。建設省は、電動モーターを搭載する二輪バイクにペダルの装備を禁止する新たな国家技術規格の草案を公表し、意見募集を開始した。
いわゆる「モペット」と電動バイクの線引きを制度的に明確化する内容で、大出力車へのABS義務化も盛り込まれている。ベトナムはすでにASEAN最大級の電動二輪車市場に成長しており、今回の規制強化はその急成長の裏側で顕在化してきた安全面の課題に対応する動きと見ることができる。
本稿では、規制見直しの中身に加え、ベトナム電動バイク・電動二輪車市場の基礎的な動向についても整理する。
ベトナム電動バイクにペダル禁止の新規格案
ベトナム建設省は、現行のQCVN 14:2024/BGTVTに代わる新しい国家技術規格「QCVN XX:2026/BXD」の草案を公表し、パブリックコメントの募集を進めている。対象となるのは、国内で生産・組立される、あるいは輸入されるバイクおよび原動機付き自転車全般で、草案には多岐にわたる技術要件の追加が盛り込まれた。なかでも各メディアが注目しているのが、電動バイクに関する規定である。
最も大きな変更点は、駆動用モーターに電動モーターを用いる二輪バイク・原動機付き自転車について、ペダルの装備そのものを禁止する規定だ。ペダル付きの電動バイクは一般に「モペット」と呼ばれる形態だが、これを車両の構造要件として排除する内容になっている。

モペットと電動バイクの境界を明確化
この規定が導入される背景には、電動バイクと電動自転車(xe đạp điện)という異なる車両区分を、構造上も明確に区別したいという行政側の意図がある。ベトナムでは現在、電動自転車は比較的緩やかな規制のもとで運用されており、ペダルを備えた電動バイクを「電動自転車」として登録・運行するケースが実務上生じやすい状況にあった。車両区分があいまいなままだと、免許制度や登録義務の適用にも抜け道が生まれかねない。
今回の規定は、ペダルの有無という分かりやすい構造上の違いを設けることで、こうした境界事例を制度面から整理し直す試みといえる。
なお、今回の草案は単発の規制ではなく、電動バイク関連規格の包括的な見直しの一環として位置づけられている点にも注意したい。現地メディアの報道からも、建設省が近い将来、電動バイクをめぐる複数の新規定を段階的に打ち出していく姿勢がうかがえる。
出力11kW超の電動バイクにABS義務化
草案にはもう一つ、重要な安全要件が盛り込まれている。定格出力が11キロワット(約15馬力)を超える電動モーターを搭載したバイクについて、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の装着を義務付ける案だ。
11キロワットという数値は、現行の運転免許区分でA1免許の上限とされる出力とも一致しており、出力レベルに応じて求められる安全装備の水準を段階的に引き上げるという設計思想が読み取れる。
このほか草案では、高電圧の電気系統に対する絶縁保護や危険表示ラベルの貼付、走行準備モードを起動する際に運転者が二つ以上の独立した操作を行うことを求める要件、バッテリー残量を常時表示し低下時には自動警告を発する機能など、運行時の安全性を高めるための規定が幅広く追加されている。
速度の不正な改造を禁じる項目も含まれており、全体として車両の性能・電気系統・運行時の挙動という複数の側面から安全性を底上げする内容になっている。
電動バイク用モーター規格、10月施行
車両全体の構造を定める今回の草案とは別に、電動バイクの主要部品そのものを対象とした技術規格は、すでに確定済みで施行時期も定まっている。2026年10月9日からは、電動バイク用モーターの技術規格「QCVN 30:2026/BXD」と、電動バイク用バッテリーの技術規格「QCVN 31:2026/BXD」という二つの国家技術規格が同時に適用開始となる。
QCVN 30:2026/BXDは、国内の製造・組立事業者やモーターの輸入業者、さらに品質・安全性の管理や検査、試験、認証に関わる組織・個人を対象に、モーター単体の技術要件を定めるものだ。
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