学研の絵本『ぴよちゃん』作者来越、日本文化をベトナムへ

株式会社学研ホールディングス、株式会社Gakken、そして学研グループの連結子会社であるベトナム教育出版大手DTP Education Solutions Joint Stock Company(以下、DTP社)は、2026年8月8日(土)・9日(日)の2日間、ホーチミン市で特別イベントを開催する。

世界累計1,100万部を突破した学研の人気絵本シリーズ『ぴよちゃん』の作者・いりやまさとし氏を現地に招き、ベトナムの子どもたちや保護者と直接交流するライブドローイングイベントを実施する。ヤマハ・ミュージック・ベトナムの協力による音楽体験プログラムも用意され、絵本の枠を超えた文化交流の場となる見込みだ。

開催に先立ち、InfoBankでは学研ホールディングス グローバル事業本部 東南アジア事業室にお話を伺った。

イベント概要

項目内容
名称『ぴよちゃん』シリーズ作家 いりやまさとしさんとの交流イベント
日時2026年8月8日(土)・9日(日) 各日8:00〜11:30
場所8月8日:ホーチミン市総合科学図書館/8月9日:ホーチミン市立小児病院
目的・絵本文化の魅力発信と絵本を通じた日本・ベトナム間の文化交流の促進
・読み聞かせを通じた親子コミュニケーションの価値発信
コンテンツ・いりやまさとしさんによるお絵かき実演
・プレゼント・サイン会
・絵本読み聞かせ
・自由にお絵かき
・音楽体験プログラム(ヤマハ・ミュージック・ベトナムご協力)
・ブロック遊び
・書籍販売 ほか
主催株式会社学研ホールディングス/株式会社Gakken/DTP EDUCATION SOLUTIONS
協力ヤマハ・ミュージック・ベトナム
対象0〜3歳の未就学児とその保護者(一般来場者も参加可)

ベトナム3社と資本提携、絵本翻訳が結んだホーチミン

学研グループは2022年頃からベトナムの教育関連企業3社と資本提携を進め、現地の子どもや保護者に向けた教育サービスの展開を図ってきた。その1社であるDTP社とは2023年の資本提携以降、日本の絵本をベトナム語に翻訳・出版する事業に継続的に取り組み、これまでに約100冊の日本の絵本をベトナム国内で展開してきた実績を持つ。

同社の拠点がホーチミン市にあり、現地の教育機関や書店との強固なネットワークを有していることが、今回の開催地選定における決め手となった。今回のイベントは、こうした両社の積み重ねの延長線上にあるもので、日本で長年親しまれてきた『ぴよちゃん』の魅力をベトナムの家庭に直接届けるとともに、絵本を通じた親子のコミュニケーションや読み聞かせ文化の魅力を伝え、日越の文化交流をさらに深める機会にしたいという狙いが込められている。

いりやまさとし先生との交流イベント1日目(2026年8月8日)のチラシ (写真提供)学研ホールディングス

主役は作者いりやま氏、ライブドローイングで交流

イベントの主な対象は0〜3歳の未就学児とその保護者だが、事前に『ぴよちゃん』シリーズを読んだ経験がない家庭でも十分に楽しめる内容として設計されている点も特徴だ。日本の絵本や幼児教育、読み聞かせそのものに関心がある人であれば、経験の有無を問わず誰でも参加できるという間口の広さを意識しているという。

そのうえで今回のイベント最大の見どころとなるのが、『ぴよちゃん』シリーズの作者であるいりやまさとし氏本人が来越し、来場者と直接交流する特別な機会であることだ。日本の絵本作家がベトナムを訪れ、現地の子どもたちや保護者と直接ふれ合う機会は、ベトナム国内でも非常に貴重だという。

会場では、いりやま氏によるライブドローイングを通じて、目の前で絵本のキャラクターが描き上がっていく様子を見ることができ、絵本の世界をより身近に感じてもらう内容が予定されている。さらに人気キャラクター『ぴよちゃん』のマスコットも会場に登場し、子どもたちと直接ふれ合える時間も用意されるほか、いりやま氏によるサイン会も実施される予定で、来場者が本人と間近で交流できる貴重な機会となりそうだ。

会場では関連書籍の販売も行われ、購入した書籍にその場でサインをもらうこともできるなど、読み聞かせ体験をより特別なものにする工夫が凝らされている。デジタルコンテンツが子どもの生活に浸透していく時代だからこそ、絵本が育む想像力や感性の価値を、親子で改めて体験してもらいたいという思いが込められている。

作家・いりやまさとしさんについて

日本語のオノマトペ、ベトナムの子にどう届けるか

日本の絵本には「ぴよぴよ」「ふわふわ」「ころころ」といった擬態語・擬音語が数多く用いられており、これらは単なる装飾的な表現ではなく、作品の世界観や楽しさそのものを生み出す重要な要素になっている。ベトナム語への翻訳にあたっては単純な直訳ではなく、原作が持つ温かさやリズム感、子どもが受け取る印象をできる限り維持することを大切にしているという。

(写真提供)学研ホールディングス

とりわけ擬音語・擬態語については、言葉をそのまま置き換えるだけでは原作の情感が伝わりにくいため、原作のイメージを損なわずに、ベトナムの子どもたちにも情景が自然に浮かぶような表現を一つひとつ検討しながら翻訳を重ねているとのことだ。日本語特有のオノマトペが持つリズム感や柔らかさを、ベトナムの言語文化の中でどう再現するかという細やかな工夫の積み重ねが、現地の子どもたちにも受け入れられる絵本づくりを支えている。

「繰り返し読みたがる」書店・家庭に根づく日本の絵本

学研グループとDTP社は、日本の人気絵本をベトナム語に翻訳し、現地の書店や教育機関を通じて継続的に展開している。『ぴよちゃん』シリーズはこれまでに20タイトルベトナム語版として出版され、ベトナム最大級の書店チェーンであるFAHASAをはじめ多くの大型書店で取り扱われるなど、日本の絵本に触れる機会は着実に広がっている。

(写真提供)学研ホールディングス

現地の保護者からは「子どもが繰り返し読みたがる」「親子で一緒に楽しめる」といった声が寄せられ、子どもたちからも親しみやすいキャラクターや温かみのあるイラストが好評だという。中でも印象的なのが、「紙の質感やキャラクターのイラストがとても気に入っている。それによって本がとても素敵に見える」という保護者の声だ。内容だけでなく、装丁やイラストの完成度の高さそのものが本の魅力を底上げしているという評価がうかがえる。

背景には、近年のベトナムで幼児期からの読書習慣や家庭での読み聞かせへの関心が高まっているという社会的な変化もある。日本の絵本ならではの豊かな表現や、親子のコミュニケーションを促す内容は、こうした関心の高まりとも重なり合い、多くの家庭から支持を集めているようだ。

翻訳の細部に日本らしさを宿そうとする姿勢、そして現地に向けた読み聞かせ文化の魅力発信——絵本文化の輸出という枠を超えたその積み重ねの先に、今回のホーチミンでの交流イベントがある。

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長

三浦 賢弥

KENYA MIURA

筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。

ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。