経済成長とともに教育熱が高まるベトナムで、日本発の絵本コンテンツはどのように受け入れられているのか。学研グループの現地展開を追った。
学研、ベトナムで絵本イベントを開催した背景
学研ホールディングスおよびグループ会社Gakken、ベトナム教育出版大手DTPは、2026年8月8日・9日の2日間、ホーチミン市で絵本作家いりやまさとし氏を招いた交流イベントを初開催した。

世界累計1,100万部を突破した『ぴよちゃん』シリーズの作家によるお絵かき実演やサイン会、ヤマハ・ミュージック・ベトナム協力による音楽体験プログラムなどが行われ、2会場合計で350名の親子が来場した。会場は同シリーズのキャラクターで彩られ、目の前で絵本が描き上がっていく様子に子どもたちが引き込まれる場面も見られたという。
日本発コンテンツ輸出という位置づけ
今回のイベントは単発の販促企画ではなく、学研グループが中期経営計画で成長戦略の柱の一つに掲げる「教育商社」構想を体現するものと位置づけられている。
学研が掲げる教育商社とは、自社グループの作品に限らず、日本の優れた出版物やキャラクターIPを海外へプロデュースし届ける取り組みを指す。ベトナムでの絵本イベントは、この構想を現地で具体化した象徴的なイベントの1つだ。

ベトナムの絵本市場が持つ成長余地
『ぴよちゃん』シリーズはすでにベトナムで20タイトルが刊行されているが、家庭での読み聞かせ習慣は今まさに広がり始めている段階にある。
経済成長と子育て世代の増加を背景に外国語教育への関心が高いベトナムでは、幼少期から日本の絵本やキャラクターに触れる機会をつくることが、日本への親近感や日越間の相互理解を育む土台になると学研グループは説明する。作家本人と直接ふれあい、自らの手で絵を描く体験を伴う今回の企画は、こうした読み聞かせ文化を後押しする第一歩としても意味を持つ。
作家にとっても新たな挑戦の場に
今回のイベントは、いりやま氏自身にとっても海外の子どもたちと直接交流する初めての機会だった。同氏は「みんなが楽しそうに絵を描く姿を見てうれしかった。今日をきっかけに、これからも絵本を読んでほしい」とコメントしている。
学研グループは、作家一人ひとりの想いを尊重しながら、その作品がベトナムを含む海外で新たな読者と出会う機会をつくっていく方針を示している。

「オールジャパン」で広がる出版コンテンツ輸出
学研グループは今回の取り組みにとどまらず、自社グループの枠を超えた出版コンテンツの海外展開も進めている。
象徴的な事例として、株式会社ポプラ社の人気児童書『おしりたんてい』シリーズをDTPと連携して2026年11月にベトナムで展開する計画が既に動き出している。自社作品の輸出にとどまらず他社作品の橋渡し役も担う姿勢は、学研グループが目指す「教育商社」の輪郭をより具体的に示すものだ。
今回のイベント運営では、音楽体験プログラムを担ったヤマハ・ミュージック・ベトナムをはじめ、現地企業との協業が重要な役割を果たした。
学研グループは今後も出版社や作家、現地パートナー企業と連携しながら、日本の出版・コンテンツをベトナムをはじめとする海外へ届ける取り組みを拡大していく考えを示している。

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長
三浦 賢弥
KENYA MIURA
筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。
ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。
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