ベトナムでは、二輪車市場における電動バイクの存在感が高まりつつある。InfoBankはベトナム在住の消費者51人を対象に、電動バイクの認知度や利用状況、今後の購入意向を尋ねる独自アンケートを実施した。その結果、回答者の94.1%が電動バイクを「よく知っている」と答え、所有者とシェアリング等での利用経験者を合わせると88.2%に達した。
今後の購入・利用についても96.1%が前向きな姿勢を示す一方、購入を検討する際の重視点では「1回の充電での走行距離」と「安全性」がともに66.7%で最多となり、車両価格以上に実用面の性能や安心感が問われている様子がうかがえる。本稿では調査結果を設問ごとに整理したうえで、ベトナムの電動バイク市場に関わる日本企業にとっての示唆を考察する。
調査概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査主体 | InfoBank(株式会社InfoBase) |
| 調査対象 | ベトナム在住の男女 |
| 調査方法 | インターネットアンケート |
| 有効回答数 | 51人 |
| 調査期間 | 2026年9月18日〜9月25日 |
| 性別 | 男性41.2%(21人)、女性58.8%(30人) |
| 年齢 | 20〜24歳 2.0%、25〜29歳 15.7%、30〜34歳 25.5%、35〜39歳 23.5%、40〜44歳 15.7%、45〜49歳 11.8%、50〜54歳 2.0%、55〜59歳 3.9% |
回答者の年齢構成を見ると、30〜34歳(25.5%)と35〜39歳(23.5%)を合わせた30代が49.0%とほぼ半数を占め、25〜44歳まで範囲を広げると全体の80.4%に達する。
仕事や家庭の用事で日常的にバイクを使う機会の多い働き盛りの世代が中心の調査であり、購買の意思決定を担う層の意識を映した結果といえる。設問はQ1・Q3・Q4が単一回答、Q2・Q5が複数回答で、複数回答の設問は回答者数(51人)に対する比率で示している。
認知と利用実態:電動バイクはすでに「身近な乗り物」
認知度はほぼ100%、イメージは「環境」と「快適さ」が中心
Q1で電動バイクを知っているかを尋ねたところ、「よく知っている」が94.1%、「名前は聞いたことがある」が5.9%で、「全く知らない」と答えた人はいなかった。電動バイクはもはや目新しい存在ではなく、ベトナムの消費者にとって日々の暮らしの中で目にする乗り物として定着している。

| 電動バイクのイメージ(Q2・複数回答) | 回答数 | 比率 |
|---|---|---|
| 環境にやさしい | 43人 | 84.3% |
| 静かで快適そう | 28人 | 54.9% |
| 充電が面倒そう | 24人 | 47.1% |
| 維持費が安そう | 14人 | 27.5% |
| パワーが不足していそう | 10人 | 19.6% |
| 興味がない | 2人 | 3.9% |
| 電気バイクについて知らない | 1人 | 2.0% |
| その他 | 1人 | 2.0% |
電動バイクに対するイメージ(Q2)では「環境にやさしい」が84.3%と突出し、「静かで快適そう」(54.9%)が続いた。排気ガスを出さない点や走行音の静かさといった、ガソリンバイクとの違いが直感的に伝わる要素が評価の中心にある。一方で「充電が面倒そう」も47.1%と半数近くに上り、充電の手間を気にかける声は肯定的なイメージと並んで広く共有されている。
注目したいのは、「維持費が安そう」が27.5%にとどまった点である。燃料費を抑えられるという経済面の利点は、環境や快適さほどには消費者に意識されていないことになる。また「パワーが不足していそう」は19.6%と2割弱で、走行性能そのものへの懸念は比較的小さい。消費者の関心は「走るかどうか」よりも「充電を含めて日常的に使いやすいかどうか」に向いていると読み取れる。
過半数が所有、シェアリング等を含めると利用経験者は88.2%
Q3で現在の利用状況を尋ねると、「所有しており、日常的に利用している」が51.0%と過半数を占めた。「所有していないが、シェアリング等で利用したことがある」の37.3%を加えると、何らかの形で電動バイクに乗った経験のある人は88.2%に達し、「利用したことがない」は11.8%にとどまる。所有者が半数を超える結果は、電動バイクが一部の先進的な層に限らず、一般の消費者の日常の足として広がりつつあることを示している。
もう一つ見逃せないのが、所有はしていないもののシェアリング等で乗ったことがある層が4割近くいる点だ。購入前に実際に乗って使い勝手を確かめられる機会が身近にあることは、購入へのハードルを下げる方向に働いていると考えられる。後述する購入意向の高さも、こうした利用経験の広がりが土台になっている可能性がある。

購入意向と重視点:問われるのは価格よりも「走行距離」と「安全性」
96.1%が購入・利用に前向き
今後の購入・利用意向(Q4)では、「積極的に検討したい」が49.0%、「機会があれば検討したい」が47.1%で、合わせると96.1%が前向きな姿勢を示した。「あまり検討したくない」は3.9%(2人)にとどまり、「全く検討したくない」と答えた人はいなかった。「積極的に検討したい」の比率が所有者の比率(51.0%)とほぼ同じ水準にあることから、新規購入に加えて、すでに所有している人の買い替えや買い増しの意向も含まれているとみられる。
一方、「機会があれば検討したい」と答えた47.1%は、条件が整えば購入や利用に踏み出す層と位置づけられる。市場拡大の余地が大きいのはこの層であり、彼らにとっての「条件」が何かを示しているのが、次のQ5の結果である。
重視点の上位は走行距離・安全性、充電スポットが続く

| 購入・利用時の重視点(Q5・複数回答) | 回答数 | 比率 |
|---|---|---|
| 1回の充電での走行距離 | 34人 | 66.7% |
| 安全性 | 34人 | 66.7% |
| 充電スポットの多さ | 26人 | 51.0% |
| メンテナンスの手軽さ | 23人 | 45.1% |
| 車両価格の安さ | 22人 | 43.1% |
| デザイン性 | 12人 | 23.5% |
| その他 | 1人 | 2.0% |
| 検討したことがない・必要ない | 0人 | 0.0% |
購入や利用を検討する際の重視点(Q5)では、「1回の充電での走行距離」と「安全性」がともに66.7%で並んでトップとなり、「充電スポットの多さ」(51.0%)が続いた。上位3項目のうち2つが充電にかかわる項目であり、Q2で47.1%が「充電が面倒そう」と答えた結果とも重なる。
1回の充電で長く走れること、そして出先でも充電できる場所が十分にあることは、日常の足として電動バイクを選ぶうえでの前提条件になっている。安全性が走行距離と並んで最上位に挙がったことも特徴的で、走行中の安定性やブレーキ性能に加え、バッテリーや充電時の安全性への関心も含まれていると考えられる。
「メンテナンスの手軽さ」(45.1%)と「車両価格の安さ」(43.1%)はいずれも4割台で中位に位置した。価格は判断材料の一つではあるものの最優先の条件ではなく、性能や充電環境に納得できれば、ある程度の価格を受け入れる消費者が少なくない可能性がある。「デザイン性」は23.5%と選択肢の中で最も低く、現時点では見た目よりも実用性を重視して選ばれる段階にあるといえる。
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調査結果から読み取れる示唆
今回の調査からは、ベトナムの消費者が電動バイクを「知っている・乗ったことがある」段階を越え、「何を基準に選ぶか」を具体的に考える段階に入りつつある姿が浮かび上がる。こうした変化を踏まえ、ベトナム市場に関わる日本企業にとっての示唆を3つの観点から整理する。
充電とバッテリーの領域に対する関心の高さ
調査で最もはっきり表れたのは、充電に関する関心の高さである。Q2では47.1%が「充電が面倒そう」と答え、Q5では「1回の充電での走行距離」(66.7%)と「充電スポットの多さ」(51.0%)が上位に入った。車両そのものの性能向上と並んで、充電インフラやバッテリー交換サービスの整備が普及のペースを左右すると考えられる。
電池材料や電池管理システム、充電器といった部材・設備に加え、集合住宅や商業施設、オフィス、工業団地といった拠点への充電設備の導入も、このニーズに直結する領域といえる。日常的に通う場所で充電できる環境が整えば、「充電の手間」という懸念そのものが小さくなるためである。工業団地や大型商業施設を手がける企業にとっても、従業員や来訪者向けの充電環境は、施設の付加価値の一つになり得る。
「安全性」への関心と日本企業の知見
安全性が走行距離と並んで最も重視されたことは、価格とは異なる軸で製品が選ばれる余地があることを意味している。車両価格の安さを重視する人が43.1%であるのに対し、安全性は66.7%であり、その差は20ポイントを超える。
バッテリーの発熱を抑える保護技術や、ブレーキ・タイヤといった走行安全にかかわる部品、品質試験や認証の分野は、品質管理の経験を重ねてきた日本企業の知見を生かしやすい領域である。完成車での参入に限らず、部品やサービスの提供者としてベトナムの電動バイク産業にかかわる選択肢は多い。
経済性の伝え方と、シェアリングを入口にした接点づくり
Q2で「維持費が安そう」と答えた人は27.5%にとどまった一方、Q5では「メンテナンスの手軽さ」(45.1%)や「車両価格の安さ」(43.1%)を重視する人が4割を超えた。費用への関心は高いものの、電動バイクの経済的な利点はまだ十分に伝わっていないといえる。
車両価格だけでなく、燃料費やメンテナンス費を含めた保有期間全体のコストを具体的な数字で示すことは、「機会があれば検討したい」層が購入を判断する材料になり得る。リースや分割払い、保守サービスを組み合わせた提案も、こうした層との接点を広げる手段として考えられる。
また、シェアリング等での利用経験者が37.3%に上ったことは、購入前の「試し乗り」の場がすでに機能していることを示している。新たに市場へ参入する企業にとっては、最初から自前の販売網を構築するのではなく、シェアリングやレンタル事業者との連携、試乗の機会づくりを通じて消費者との最初の接点を持つことも有力な選択肢となるだろう。
まとめ
今回のInfoBank独自調査では、ベトナムの消費者の間で電動バイクの認知と利用がすでに広く浸透し、今後の購入・利用意向を96.1%と高い水準にあることが確認された。購入を左右するのは価格の安さ以上に、1回の充電で走れる距離と安全性、そして充電できる場所の多さである。
普及の次の段階では、車両単体の魅力に加えて、充電環境やアフターサービスを含めた「使い続けやすさ」が問われることになるだろう。日本企業にとっては、充電・バッテリー関連の設備や部材、安全にかかわる部品や試験、保有コストを見える形で示すサービスなど、完成車以外にも関われる領域が広い市場といえる。
なお、今回の調査は回答者51人のインターネット調査であり、回答者はデジタルサービスに親しんだ層が中心と考えられる。数値は市場全体の傾向をつかむための参考値としてご覧いただきたい。InfoBankでは今後も、ベトナムの消費者や市場の動向に関する独自調査を継続して発信していく。

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長
三浦 賢弥
KENYA MIURA
山形県山形市出身。筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。
ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。
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