イオン株式会社は2026年5月11日に発表した新たな中期経営計画(2026〜30年度)で、ベトナムを「最重点国」と明確に位置づけた。
ベトナム事業の営業収益を2026年度の1,200億円から2030年度には3,000億円超へと約2.5倍に、営業利益は約4倍に拡大する目標を掲げる。イオングループ全体では、2030年度にはベトナムで300店舗体制を目指す。対ASEAN投資の約6割をベトナムに集中配分する方針も示した。
ベトナム事業の好調な実績

(出所)イオン株式会社「グループ中期経営計画」(2026年度~2030年)
イオンモール社の2025年度上期(2025年3〜8月)におけるベトナム事業は、営業収益90.95億円(前期比11.0%増)、営業利益24.33億円(前期比0.8%増)となった。
既存6モールの専門店を見ても、売上は前期から8.5%増え、来店客数は前期比で2.8%増と、いずれも堅調に伸びている。第2四半期(6〜8月)の専門店売上は11.7%の増加、2025年8月単月では 25.0%増に達した。
同社の海外事業において、ベトナムは中国に次ぐ第2位の規模で、世界に占めるベトナムの営業収益の比率は17.1%を占めている。

中型ショッピングセンターの開業と「ドミナント出店」
イオンがベトナムで急成長を遂げている理由として、「ドミナント出店」と呼ばれる戦略をとっている点があげられる。
ドミナント出店とは、特定のエリアに店舗を集中的に開き、配送効率や認知度を一挙に高める手法である。イオンはこれまで日本における大型SCの出店を通じて、ドミナント戦略を実践してきた。
ベトナムでは南部・北部の二大都市圏に加え、中部エリアの周辺都市でもドミナント出店を推進 する方針が示されている。
この新たな方針の始まりとなるのが、2025年10月にイオンベトナム初のSC(ショッピングセンター)業態として開業したイオン タンアンSCだ。延床面積はおよそ2万7,000㎡の中型SCである。大型のイオンモールと比べて、中型SCは建築にかかる時間を短くでき、商圏をより細かくカバーできる特徴を有している。ドミナント出店で店舗を増やしていくのに適した業態と言える。
2026年下期にはイオンモール タインホアとハロンの2モールの開業も決定している。ダナン タンケーも時期は未公表ながら開業が決まっており、今後、ベトナム全域で大きな成長を見込む。

イオン「タンアン」:地方攻略の新モデル
イオン「タンアン」は、地方の生活者に寄り添った「地方密着型」の店舗設計が最大の特徴だ。商圏は車で約15分圏内を想定しており、周辺に暮らす約26万人の日常的な需要を丁寧に取り込む。大型のイオンモールが30分圏内・100万人超を対象とするのとは対照的に、よりコンパクトなエリアへの細やかな対応を重視している。
テナント数は約30と厳選されているが、衣料品店「マイクローゼット」や生活用品店「ホームコーディ」などイオン独自の専門店を核に据え、プライベートブランド「トップバリュ」や日本食惣菜も充実させることで、他チェーンとの明確な差別化を図っている。
イオンはこの中型SC業態を地方展開の新たな柱と位置づけており、すでに出店候補地は全国10カ所以上にのぼるという。

イオングループの新たな中期計画に見る拡大路線
イオングループの新たな中期計画では、ベトナム事業をどれだけ拡大させるか具体的な数字で紹介している。営業収益は1,200億円(2026年度)から3,000億円超(2030年度)と、5年間で2.5倍の成長が目標。営業利益も約4倍に拡大させる方針である。
グループ全体では2030年度に300店舗体制を構築する計画である。対ASEAN投資の約6割をベトナムに集中的に配分するという方針も明らかにされた。新たな中期計画では「10年後の小売業No.1を目指す」と野心的な目標を掲げる。

ベトナムの小売市場が支える成長への期待
イオンが300店舗体制を目指す背景には、ベトナム市場に吹く「追い風」がある。
ベトナムは、平均年齢が30代前半という若年人口ボーナス局面にある。スーパーやコンビニなどで買い物をする現代小売(モダントレード)のシェアは、2030年にはおよそ40%へ拡大する見通しだ。イオンSCの出店はこうした小売市場の動きにマッチしている。なお、現代小売と伝統小売の違いについてはこちらの記事も参照いただきたい。
若い人々による活発な経済活動を後押しに、ベトナムの2025年の経済成長率は8%に達する見込み。人々が受け取る所得の目安となる、1人当たりGDPも大きく伸び、およそ1億2,550万ドン(2025年、日本円でおよそ75.6万円) に達する。為替レートは1円=166VNDで換算、出所:Bloomberg、2026年5月21日時点)。
- 若年人口の多さ(人口が世界16位の約1億人、平均年齢が30代前半)
- 小売の現代化(成長が見込まれる地方都市への展開を推進へ)
- 所得の上昇
といった3つの要素が、イオンのドミナント出店戦略を支え、ベトナムの消費者からの支持を集めている。イオンは日本の地方都市に店舗網を広げ、地域で生活するうえでの拠点となってきた。ベトナムでも日本のように、地域に欠かせないハブとしての立場を狙う。
