髙島屋グループ、ベトナム住宅市場に本格参入
2026年5月28日、髙島屋グループの不動産開発子会社である東神開発株式会社は、ホーチミン市北部(旧ビンズン省エリア)で分譲住宅事業トップシェアを誇るBcons社および日系投資グループ・マーキュリアホールディングスのグループ会社であるMercuria (Thailand) Co., Ltd.と「共同事業契約」を締結した。
ホーチミン市都市鉄道1号線の延伸計画エリアに位置する2つの分譲住宅プロジェクトへの参画が目的で、3社が共同で調査・投資・開発にあたる。
InfoBank編集部は今回の発表を受け、東神開発に対し、戦略的背景や事業構想について取材を行った。

ホーチミン市都市鉄道延伸エリアに2案件・2,250戸超を計画
今回参画する2案件は、いずれもホーチミン市に統合された旧ビンズン省エリアに立地し、都市鉄道1号線の延伸計画エリアに位置する。プロジェクト1は約1,000戸(敷地面積約5.0ha)、プロジェクト2は約1,250戸(同約6.5ha)で、ともに2028年竣工を予定している。
東神開発は2つの現地法人にそれぞれ出資し、円滑な事業推進に貢献する。今後は同エリアでのTOD(公共交通指向型都市開発)への参画も視野に、住宅開発事業を展開していく方針だ。

「流山おおたかの森」から「ホーチミン」へ—TODノウハウの国際展開
東神開発がベトナムで展開しようとしているのは、単なる不動産開発にとどまらない。日本国内で培ってきた「立地創造型まちづくり」のモデルを、ベトナム市場に移植しようという試みだ。その中核となるのが、千葉・流山市で実現した「流山おおたかの森S.C.」を核とした街づくりのノウハウである。
駅や交通結節点を起点に商業・住宅・公共機能を組み合わせ、街全体の価値を高めるこのモデルは、開発から運営まで一貫して担う長期的視点が不可欠だ。東神開発は「ベトナムでも、鉄道・住宅・商業・公共施設が連動する長期的な開発により、街のブランド価値を高め、好循環を生むことが重要」と語り、行政や現地企業との連携を重視した現地密着型の開発体制を構築してきたと説明する。

髙島屋グループ「最大の成長ドライバー」——ベトナムへの戦略的傾斜
髙島屋グループは、ベトナムをグループ最大の成長ドライバーと位置づけ、経営資源の重点配分先としている。2016年のサイゴンセンター開業・ホーチミン髙島屋開店以降、ホーチミン・ハノイ両市で複数のプロジェクトを推進し、着実な利益貢献を続けてきた実績が、その判断を支えている。
こうした積み重ねが現地での知名度・信頼性を高め、新たなパートナーシップ構築の呼び水にもなっている。人口増加・経済成長・都市化の進展を背景に住宅需要は旺盛で、生活水準の向上に伴う日本ブランドへの需要も高まると見られる。
特にホーチミン市では都市鉄道を中心とするインフラ投資が本格化しており、東神開発は「商業開発に加え住宅分野にも取り組むことで、収益ポートフォリオの多様化と成長基盤の強化を図っている」と語る。

ベトナム・ホーチミンのTOD開発、法整備と民間参入が加速
ベトナムにおけるTODの発展可能性について、東神開発は積極的な見方を示す。近年は都市鉄道等のインフラ整備と並行して、鉄道と不動産の一体開発を指向したTOD関連の法整備も進展しており、事業環境は着実に整いつつある。
地場大手を中心に民間企業の検討も活発化しており、今後の具体化が期待される段階にある。東神開発は「人口流入・拡大期待や市場成長期待が先行する局面にある点で、流山おおたかの森の初期段階とも通じるものがある」と指摘する。TOD開発の黎明期を日本で経験した企業として、ベトナムの現在地を冷静に見極めながら事業展開を進める構えであり、「ベトナムにおけるTOD開発の拡大余地は大きい」と評価している。
