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中東紛争がベトナム航空業界に与える打撃
2026年2月28日から始まった米国、イスラエル、イランの間での軍事衝突。これにより湾岸諸国への攻撃やホルムズ海峡閉鎖などで、当事国だけでなく世界的な影響を及ぼしている。ベトナムも例外ではなく、特に航空業界への影響は甚大だ。
欧州ルート寸断で航空運賃が急騰

今回の中東情勢の悪化で影響を受けたのは、欧州からベトナム各地へのアクセスである。
ベトナムから欧州に向かうとなると、直行便は限られ、ドバイやドーハなどを経由して向かうルートが主流であった。
しかし中東情勢の悪化で米軍基地がおかれたUAEやカタールなどの湾岸諸国はイランからの攻撃の対象となり、ドバイやドーハの空港も被害を受け、両空港からの長距離国際線の再開も難しくなってしまった。
これによりベトナム~ヨーロッパ各地、アフリカ各地に向かうには直行便または香港・バンコク・シンガポールなどの東南アジア・東アジアの別の都市を経由する便を選ばなければならなくなった。
その結果、ベトナムを含む東南アジア・東アジアの航空会社は急増する需要に応えることが難しくなり、航空運賃が上昇し、顧客負担が増加している。
迂回飛行で1便あたり2,000ドルの追加コスト

またベトナム~欧州間の直行便においても今回の中東情勢の悪化における影響は甚大だ。
ベトナム民間航空局は航空会社に対し、代替ルートの選択を義務付けている。
今回の紛争で、ベトナム航空のベトナム発ヨーロッパ行き路線は、イラン、イラク、および近隣諸国の領空を避ける必要が出てきたため、現在は中央アジア/中国を経由する北回廊または南アジアおよびサウジアラビア上空を経由する南回廊を利用する必要がある。
これにより飛行時間が1便あたり10~15分増加し、約2,000米ドルの追加費用が発生すると見込まれている。
また、紛争が激化した場合、ベトナム航空は紛争地域に隣接する大陸間路線を運航する航空機に対し、約10~15%の追加戦争リスク保険料を支払う可能性に直面している。
燃料不足と減便で空港・管制収入が月1,000万ドル超の損失

ベトナム含む東南アジア諸国は石油の中東依存度が高く、日本のように多くの備蓄があるわけではない。
そのため航空燃料の不足にも苦しんでおり、紛争の影響を中東路線だけでなく、その他地域の路線にも影響が及んでいる。
現にベトナム航空は燃料不足のため国内線の減便にまで踏み切っている。
地域問わずに相次ぐ減便は、ベトナムの航空当局に著しい経済損失を与えている。
例として、ベトナム航空交通管理公社(VATM)の航空交通管制業務に対する紛争の影響による推定収益損失は、週あたり約25万米ドル、月あたり約100万米ドルもの損失という状況である。ベトナム空港公社(ACV)は、旅客サービス料、空港サービス料などを含め、毎月約1,090万米ドルの損失を出している。
ベトナム民間航空局は、ベトナム空港公社(ACV)と連携の上で駐機料金の減額などの支援策を検討しており、今後の状況が注目される。
中東路線停止がベトナムの製造業サプライチェーンを直撃

中東情勢悪化がベトナム航空業界に与えた影響は、旅客輸送だけではない。
同国にとって中東湾岸諸国は製品の輸出入における重要な中継地点で、紛争で被害を受けたことで、製造業をはじめ多くの産業に悪影響をもたらしている。
ベトナムはヨーロッパ各地からの電子部品やハイテク製品の輸入のうち、約25~30%が中東経由となっている。中東情勢の悪化によって、ドバイ路線やドーハ路線などが運休したことにより、北部(バクニン省、タイグエン省)をはじめとした工業地帯の生産ラインにおける部品不足のリスクをもたらしている。
またベトナムからヨーロッパ各地に輸出される電気製品や衣料品についても中東路線欠航の影響を受けている。
サプライチェーンへの影響はベトナムへの企業進出に大きく関わるだけに、一刻も早い事態鎮静化が望まれている。
ベトナム航空市場の概要——主要2社が牽引する成長軌道
中東情勢で苦境となっているが、ベトナムの航空市場は、コロナ後の急回復と中間層拡大を背景に東南アジアでも屈指の成長軌道にある。2025年上期には旅客数は約5,970万人に達し、そのうち国内3,680万人、国際2,290万人となっている。
主なプレイヤーとしては国営のベトナム航空とLCCのベトジェットの2社が存在する。その概要を説明する。
ベトナム航空——フルサービスのフラッグキャリアが守る国際路線網

ベトナム航空は1956年設立のフラッグ・キャリアとして長年にわたり国内線・国際線を運航してきた。機材はA350やB787をはじめとする長距離路線用の大型機・中型機や短距離路線用のA320シリーズなど96機を揃え、ベトナム国内線および日本・韓国・中国・東南アジア各国などのアジア路線の他、旧宗主国フランスなどへの長距離路線を長年にわたり運航してきた歴史がある。
ベトナムは空港インフラが脆弱なため定時運航率が業界平均で約62.6%まで低下している。ただベトナム航空については2025年時点で約70〜71%と業界平均を上回っている。
しかし近年は後述するベトジェットをはじめ、エアアジア、ライオンエアなどのLCC(格安航空会社)に値段の安さもあって顧客を奪われ、押されがちだ。
同社は航空連合スカイチームに加盟し長距離国際線を中心にネットワークを強化するなどフルサービスの航空会社ならではの強みで対抗している。
ベトジェットエアー——ベトナム最大のLCCが国際線拡大を加速

ベトジェットエアーは2011年に運航を開始したベトナム最大のLCC。
新興ではあるものの機材数は2026年5月4日時点で105機と既にベトナム航空を上回る数を運用している。機材はA320ファミリーを中心に、高需要路線には中型機・A330も使われている。また2025年には同年で世界2位となる120機を発注しており、今後の規模拡大に余念がない。
路線展開は国内線や近距離国際線が多いが、日本やインドなどある程度距離のある市場への進出も盛んである。日本に関しては広島や静岡などにも就航するなど、他の東南アジアの航空会社と比べても多くの都市に就航している。
またタイにも子会社タイ・ベトジェットエアが存在し、同社も日本などの国際線を運航している。
一方で定時運航率は約50.6%と同国平均よりも10%以上低い。同航空はLCCのため1機材あたりで高稼働となっており、そのため遅延率もフルサービスのベトナム航空より高くなりがちになっている。
ベトナム航空業界に台頭する新興3社
ベトナムの航空市場では、従来の大手2社に加え、新興航空会社や再編中の企業が存在感を高めている。これらのプレーヤーは親会社の事業基盤や資本力を背景に独自の戦略を展開しており、市場構造の多層化が進んでいるのが特徴である。以下に代表的な3社を紹介する。
ベトラベル・エアラインズ——エアアジア傘下入りで再建なるか

ベトラベル・エアラインズは2021年に就航した新興航空会社である。
ベトナムの旅行大手・ベトラベルホールディングスの出資によって作られており、同社の観光事業と連携したチャーター便を定期便と合わせて運航していた。国内線の他、韓国や東南アジアへの運航実績も存在する。
一方で財務基盤の強化が課題であり、2024年以降は戦略投資家の選定や資本増強の動きが報じられていた。
そのため、2025年11月にはベトラベル社が株を手放しグループから離脱させることを発表。その後マレーシアのエアアジアの親会社であるキャピタルAが新たな親会社になるという報道が流れていた。
エアアジアは東南アジア最大のLCCで本国マレーシアやタイなどでは絶大なシェアを誇る。企業買収についてもフィリピンでは成功し、同国の大手航空会社の一角を担っている。
一方日本やインドでは競合出資者との対立や現地当局との対立、現地の嗜好に合わないサービスなどもあり需要が低迷しわずか数年で撤退している。
既にベトジェットという強力なライバルが存在するベトナムで、どのように展開していくかが注目される。
バンブーエアウェイズ——急拡大から経営危機へ、再建の行方

バンブーエアウェイズは2019年に運航を開始した民間航空会社である。
不動産・観光開発を手がけるFLCグループを母体とし、その資金力で急拡大。就航後わずかの間にベトナム国内の20%のシェアを握ることに成功した。また国内や周辺諸国だけでなく、中型機B787を用いてロンドン・フランクフルト、メルボルン、シドニーへの路線も開設していたほか、総二階建て機A380をリースする計画や米国への路線開設計画もあった。
日本との関係も深く、ハノイ~成田に就航していたほか、JALとの提携も検討され、一時はJALの元幹部が会長を務めていたこともある。
しかしあまりにも急激に拡大してしまったために機材構成が複雑になるなどコストが激増。2022年には親会社・FLCグループの会長が相場操縦の疑いで逮捕されたこともあり、バンブーエアウェイズの勢いは急失速してしまう。
その後機材をA320に統一し主要都市間路線に絞り込むなどの施策をとることで再建を目指すも、2026年には債務返済が滞り担保が銀行に差し押さえられたことが発表されるなど経営危機はなお続いている。
サンフーコック・エアウェイズ——フーコック島を拠点に長距離路線へ参入

出典:https://www.planespotters.net/photo/1912449/vn-a909-sun-phuquoc-airways-airbus-a320-251n
サンフーコック・エアウェイズは、リゾート開発大手サングループが出資し、2025年に設立が承認され同年11月に運航が開始された新規航空会社である。
名前の通りフーコック島を拠点とする航空会社で、ベトナム国内のほか、日本を含む国際線の開設計画も存在する。
現在はA320シリーズによる運行だが、2026年2月にはB787を40機導入することが発表され、北米や欧州への路線も計画されているようだ。
初期投資額は約2.5兆ドン規模とされ、サングループが進めるフーコック島の観光開発と航空輸送を一体化した事業モデルが特徴である。フーコック島は政府主導で観光開発が進む重点地域であり、航空需要の成長余地が大きい。2027年にはフーコック空港の新ターミナルが開業予定となっているため、ますますの発展が期待できる。
一方フーコック島については過剰開発の懸念もあり、現に一部地域においてはテナントが埋まらない状況が発生していることが現地メディアでも報じられている。東南アジアではバリ、プーケット、ペナンなど多くのリゾート地が存在するだけに、フーコックが観光地としてこれらの競合を図れるかも含めて注目される。
ベトナムで加速する空港建設——2030年に30空港体制へ
ここ数十年で大きく経済成長を遂げたベトナムは現在航空需要が大きく伸びており、それに応えるべく新たな空港の建設が相次いでいる。その中でも象徴的とも言えるホーチミンの新空港であるロンタイン国際空港と地方空港の開業について述べたい。
ベトナム南部の新たな玄関口・ロンタイン国際空港

ベトナムでは航空需要の急拡大に対応するため、国家主導・民間主導の双方で空港整備が加速している。既存空港の拡張では対応しきれない需要に対し、新規大型ハブの建設と地方空港の整備が同時並行で進む点が特徴である。
特に代表的なものが南部ドンナイ省でホーチミン郊外にて建設が進むロンタイン国際空港だ。ホーチミンにはベトナム戦争の激戦地で市街地にも近いタンソンニャット空港が存在するが、市街地に近いだけに混雑が深刻でベトナムで深刻化する航空路の遅延の大きな要因の一つといわれている。
ロンタイン国際空港は、総投資額約160億ドル規模の国家的プロジェクトである。第1期は2026年の商業運用開始を目標とし、年間2,500万人の処理能力を持っている。
最終的には年間1億人規模の処理能力を持つ、東南アジア有数のハブ空港を目指す。
同空港はホーチミンのタンソンニャット空の過密問題を解消するだけでなく、物流・金融・商業機能を統合した「エアポートシティ」構想の中核と位置付けられている。関連道路や物流拠点の整備も進められており、航空インフラを軸とした地域経済再編の典型例といえよう。
地方でも相次ぐベトナムの空港建設

ベトナムでは地方空港の整備も同時に進んでいる。代表例がサングループによるフーコック島のヴァンドン国際空港であり、同国初の民間主導空港として2018年に開業した。
この動きはフーコックやファンティエットなど観光地にも広がり、リゾート開発と空港整備を一体化するモデルが確立されつつある。
国営企業であるAirports Corporation of Vietnam(ACV)が全国21空港を運営する一方で、民間資本の参入が進むことで、空港整備は単なるインフラ投資から「地域開発の中核事業」へと性格を変えつつある。
ベトナム国内ではこの他にも7つの空港を建設する予定で、2026年現在の22空港体制から4年後の2030年までに30空港の体制を見込んでいる。
2050年までにはさらに3つの空港を建設し、33空港体制を目標としている。また2030年の旅客数の目標は2億7,500万人前後を見込んでいる。
今後の展望や考察:市場拡大の余地は十分だが過剰投資の懸念あり

ベトナムは国土が南北に広く、北部の首都ハノイと南部の最大都市ホーチミンの間は直線距離で見ても1100km以上離れている。また山岳が海岸線に迫っている箇所も多く陸路では不利になる。さらには経済成長も著しく、ダナンやホイアン、ニャチャン、フーコック島などのリゾート地も多い。
また前述したFLCグループやサングループなどのコングロマリットが航空市場に参入する例は他の国でも見られ、フィリピンのJGサミットホールディングスが設立したセブパシフィック航空が同国最大の航空会社に成長するなど成功例も見られる。
そのため私は航空市場の拡大の余地は大きく、今後の市場成長や新規参入の増加には期待できると考えられる。
一方で懸念される点が、各航空会社、とりわけ新興勢力による過剰ともいえる投資である。

ベトナムの航空会社の中には、急激な路線拡大を急ぐあまりに異なる機材を大量に導入する、親会社と共同でインフラ整備に熱を入れるなど高コスト体質につながりかねない世策が目立つ。
またベトナムは不動産バブルの懸念も心配されており、前述したフーコックだけでなくダナンなどでも廃墟化した建物や住人の少ない新興住宅街などが問題になっている。
これら不動産プロジェクトには航空会社の親会社が絡んでいる例も多い。
かつて日本航空はホテルやジャンボジェットなどへの過剰投資が行われた結果、高コスト体質が定着してしまい、2010年にグループ合計で約2兆3000億円、金融機関を除く事業会社は日本の戦後ワースト1位という負債額を抱えて倒産してしまった。
この他にもスイス航空や中国の海航集団など、多角化などを目的にした過剰な投資によって業績を落とし経営破綻に至った航空会社の例は枚挙に留まらない。
現在の様子を見ていると、ベトナムの航空会社のうちいくつかが80年代から2000年代にかけての日本航空と同様な状況に陥らないか不安視されるところだ。今後の動向を注視したい。
参考文献
・Reuters ”Iran war, jet fuel concerns cloud airlines’ summer holiday plans
・Reuters ”Vietnam Airlines plans domestic route cuts due to jet fuel shortage, regulator says”
・Vietnam.vn「Xung đột Trung Đông: Ngành hàng không, du lịch Việt Nam thất thu thế nào?」
・Vietnam.vn「Cục Hàng không Việt Nam ra văn bản khẩn trước tình hình chiến sự leo thang tại Trung Đông」
・Vietnam.vn「Xung đột ở Trung Đông: Các hãng hàng không Việt khai thác chặng bay này thế nào?」
・Vietnam.vn「Các hãng hàng không Trung Đông tiếp tục hủy chuyến bay từ Việt Nam」
・Lao Động「Vietnam Airlines thông tin chuyến bay tới châu Âu trước diễn biến phức tạp tại Trung Đông」
・Viet-Kabu「Xung đột Trung Đông đẩy chi phí vận hành của Vietnam Airlines tăng cao」
・Plane Spotters Net “Vietnam Airlines“
・Reuters ”Asian airlines trim schedules, carry extra fuel as supplies tighten”
・VnExpress “Vietnam aviation rebounds but punctuality declines in first half of 2025”
・Plane Spotters Net “VietJetAir”
・Vietnam News “Flight delays rise as air traffic climbs in 2025”
・Vietnam Investment Review “Vietjet’s 2026 AGM highlights strong 2025 results”
・Vietnam.vn”Cục Hàng không Việt Nam ra văn bản khẩn trước tình hình chiến sự leo thang tại Trung Đông”
・Reuters “Vietnam approves establishment of Sun PhuQuoc Airways”
・Vietnam.vn “Bamboo Airways lại bị ngân hàng siết nợ”
・skybudget 「ベトナムの新興エアラインのサンフーコック航空が商用運航を開始 将来的に日本路線の開設も」
・skybudget「日本にも就航を計画するサンフーコック航空が787を最大40機発注」
・Reuters “Sun PhuQuoc Airways plans fleet expansion and long-haul operations”
・VietnamNet “Long Thanh airport races toward commercial operation”
・Vietnam.vn “Overview of the Long Thanh Airport mega-project”
・Routes Online “ACV simultaneously inaugurates three key projects”
・Vietnam News “Deputy PM urges faster implementation of Long Thanh airport”
・ジェトロ「空港開発計画を公布、2030年までに30空港体制を目指す」
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