ベトナムの複合企業マサン・グループは、タングステンくずを廃棄物ではなく再生原料として捉え、回収・再精製する循環型モデルを広げる考えを示した。背景には、一部地域に偏る世界の供給構造と、AI・半導体など先端産業向け需要の拡大がある。自社鉱山、外部精鉱に再生原料を加え、調達源を多層化する狙いだ。
マサン、タングステン原料を「採掘+外部調達+再生」へ
精製タングステンは4~6月に91%増
マサンの非鉄金属部門マサン・ハイテク・マテリアルズ(MHT)は、北部タイグエン省のヌイファオ鉱山で採掘した鉱石だけでなく、外部パートナーから調達する精鉱も加工に取り込んでいる。2026年第2四半期(4~6月)は、採掘量の回復と受託加工の許可取得後に外部精鉱の調達が増え、精製タングステンの生産量は前年同期比91%増となった。タイグエン省政府の公表では、同四半期の精製量は1,430トンに達した。
この伸びが示すのは、鉱山の増産だけではない。MHTは既存の精錬・化学処理設備に複数の原料を入れ、稼働率を高める方向へ事業モデルを広げている。
同社の原料調達ページでも、ヌイファオ鉱山、自社外から購入するタングステン精鉱・中間原料に加え、タングステンを含むスクラップやリターン材を調達対象として掲げる。つまり、自社鉱石だけに依存しない処理モデルがすでに事業運営の一部になっており、今回の「タングステンくずを再生原料へ」という提案は、その延長線上にある。

再生原料化は数年前からの継続テーマ
タングステンくずのリサイクルは、今回突然浮上したテーマではない。MHTの2024年年次報告によると、同社は2023年にベトナムでリサイクル工場の実現可能性調査を完了し、2024年には関係省庁とスクラップ輸入規制の見直しに向けた協議を続けた。ベトナム国内だけでは経済性を満たす量のタングステンくずを集めにくいため、国内回収に加えて海外由来の再生原料も視野に入れてきた。
制度面でも変化の余地が生まれている。2025年1月施行の政令05/2025/NĐ-CPは、国外から生産原料として輸入できるスクラップの品目について、需要、経済・環境効果、リサイクル技術などを踏まえ、政府がリストを見直す仕組みを整えた。
2026年の統合規定でも、この考え方は維持されている。MHTがタングステンくずを「廃棄物」ではなく「再生原料」と位置付ける背景には、輸入可能なスクラップ品目の見直し余地を事業化につなげたい狙いがある。

循環型モデルが供給網と加工拠点の価値を変える
1億1,500万トンの資源拡張と外部原料を組み合わせる
続きを読むには会員登録またはログインが必要です。
