ベトナムで原産地証明書(C/O)の発給権限が地方政府へ移管されたことをきっかけに、輸出企業の間で手続きの遅延が相次いでいる。制度移行に伴う登録情報の引き継ぎ不備が主な原因とみられ、皮革・履物業界や水産物輸出業界からは商工省に対して早急な改善を求める声が上がっている。ベトナムの主要輸出産業に広がるこの混乱の背景と、政府の対応状況を整理する。

地方移管でeCoSys登録に混乱、原産地証明書の発給が滞る

2026年8月1日、ベトナム商工省は通達26/2026/TT-BCTを施行し、原産地証明書の発給権限の一部を省・市人民委員会へ移管した。この措置により、EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)ごとに定められたC/O様式について、輸出企業は電子原産地証明書管理・発行システム「eCoSys」上で発給機関の変更登録を行う必要が生じている。

問題となっているのは、発給機関の切り替えに伴い企業登録情報(trader profile)の再審査が求められるケースが少なくないことだ。

現地報道によれば、この再登録手続きに最大10日程度を要する例も確認されている。審査が完了するまでの間は原産地証明書そのものを申請できず、輸出書類の準備や出荷スケジュールに遅れが生じる構図となっている。加えて、地方の商工局では急増する申請件数に対して人員やシステム体制の整備が追いついておらず、審査基準や必要書類が地域によって異なる状況も遅延を助長している。

ホーチミン・ハノイに申請集中、業界団体が是正を要望

ホーチミン・ハノイの商工局が受け付けたC/O申請件数(出所:商工省の対応会議に関する現地報道(Tạp chí Kinh tế – Tài chính、2026年8月18日)) 

権限移管後も、実際の申請は処理能力や経験の蓄積がある大都市の発給機関に集中する傾向が鮮明になっている。8月17日に開催された商工省の会議では、ホーチミン市の商工局が9,056件の申請を受け付け、そのうち半数以上が市外企業からのものであったと報告された。ハノイでも受付件数2,576件のうち43%が域外企業からの申請であり、地方分散を狙った制度改正が、かえって特定拠点への集中を招いている実態が浮かび上がった。

こうした事態を受け、ベトナム皮革・履物・ハンドバッグ協会(LEFASO)は8月13日、商工省に対して緊急の改善要望を提出した。要望の柱は、企業に再登録の手間を強いるのではなく既存のeCoSys登録情報を新たな発給機関へ自動的に引き継ぐこと、審査期間中であっても原証明書の申請を可能にすること、暫定的な登録情報での対応を認めること、そして地方担当者への研修強化などである。

翌14日にはベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)も同様の趣旨の要望書を提出しており、この問題が皮革・履物業界にとどまらず、水産物や縫製をはじめとする幅広い輸出産業に共通する課題であることが明らかになっている。

輸出企業への影響とベトナム政府が進める対応策

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