米小売り大手ウォルマートとターゲットが、9月の国際調達展示会を通じてベトナムで供給業者の開拓を広げる。対米輸出は2026年1~7月に1,047億ドルへ伸びたが、商談の入口では価格や品質だけでなく、生産能力、工場監査、原材料まで追える供給網の透明性が問われる。

米小売の調達拡大、輸出1,000億ドル超が追い風

ウォルマートは6分野、ターゲットは初参加

ベトナム商工省が9月3~5日にホーチミン市のサイゴン展示会議センター(SECC)で開く「Vietnam International Sourcing 2026」に、ウォルマートとターゲットが参加する。ウォルマートは4年連続で、衣料・アクセサリー、履物、繊維・関連資材、家電・電子機器、家具、食品・消費財の6分野で供給業者を探す。ターゲットは今回が初参加で、家庭用品、ホームテキスタイル、子ども用品、パーソナルケア・美容用品などを対象とする。

ターゲットが重視するのは、ベトナム国内に生産拠点があることに加え、安定した生産能力や輸出実績を持ち、IKEA、Walmart、Costco、Amazonなど国際的な小売・流通企業への納入経験を示せる供給業者だ。高品質なプライベートブランド(PB)商品を共同開発できる能力も評価対象となる。単に安価に量産できる工場ではなく、商品開発から品質保証まで担える企業へ調達先の期待値が上がっている。

対米輸出は1~7月で1,047億ドル

2026年1~7月のベトナムから米国への輸出額は1,047億ドルで、前年同期比23%増加した。米国は引き続きベトナム最大の輸出先で、同期間の対米貿易黒字は914億ドルと22.6%増えた。2025年通年の対米輸出も約1,531億ドルに達しており、米国向けの供給基盤は急速に拡大している。

今回ウォルマートが探す6分野は、いずれもベトナムの主要輸出産業と重なる。2025年には繊維・衣料が約463億ドル、履物・バッグが約300億ドル、木材・木製品が約172億ドル規模で世界市場へ輸出された。海外バイヤーにとって、ベトナムは特定品目だけの補完的な調達先ではなく、複数カテゴリーを横断して供給できる生産拠点になりつつある。

受注の条件は「作れること」から「説明できること」へ

工場監査と生産拠点開示が商談の前提

ウォルマートの公式サプライヤー要件では、非食品・非包装の直接輸入工場について、新規工場の発注確定前にFactory Capability & Capacity Audit(FCCA)を実施する。供給業者は商品、施設、記録を監査・検査に提供し、責任ある調達の対象となる施設を開示する必要がある。無断の施設や再委託先で生産した場合、取引資格を失う可能性もある。

ターゲットも、生産開始前に責任ある調達プログラムの対象となる全生産拠点を開示し、対象施設では監査要件を満たすよう求める。さらに、製品に組み込まれる材料やサービスを提供する拠点の一覧管理も必要とする。米国市場では原産地や強制労働への監視が強まっており、ベトナム商工省も原材料の原産地、供給業者、生産拠点、製造工程を説明できることの重要性を強調している。

日系企業も委託先評価を「価格+透明性」へ

ベトナム企業にとって販路は、PB向けOEMだけではない。2025年の同展示会では、ウォルマート側の商談ニーズとしてOEM生産者と既存ベトナムブランドの双方が示されており、製造能力を生かしてPBを供給する道と、自社ブランドで海外の売り場を目指す道が並行している。今回ターゲットがPB開発力を重視していることも、単純な受託生産から企画・開発を含む高付加価値型へ移る余地を示す。

日本企業がベトナムで共同商品開発や委託生産を行う場合も、価格、品質、納期だけで委託先を選ぶリスクは高まる。海外大手への納入実績、FCCAなどの監査対応力、原材料の原産地情報、再委託先の管理、変更時の承認プロセスまで確認することが重要になる。米小売り大手の調達拡大は受注機会を広げる一方、サプライヤー選定基準を国際水準へ引き上げる圧力にもなる。ベトナムを輸出拠点として活用する日系企業にとっても、供給能力とトレーサビリティを同時に管理できる体制が競争力を左右する。

ベトナム経済メディアInfoBank 編集長

三浦 賢弥

KENYA MIURA

山形県山形市出身。筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。

ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。

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