ベトナム経済、2026年は6.8%成長へ減速

世界銀行は2026年5月15日、2026年のベトナム経済成長率6.8%と予測する最新の「ベトナム経済アップデート」を公表した。前年2025年の8%成長からの減速ではあるが、依然として高水準を維持する見通しだ。外部環境の逆風を受けながらも底堅さを示すベトナム経済の現状と、その先に潜むリスクを整理する。

輸出・FDI・観光が牽引した2025年の躍進

2025年のベトナム経済は複数の分野で過去最高を更新した。輸出16%増の4,750億ドルに達し、GDP比93%相当という世界でも突出した水準を記録。電子機器・テクノロジー製品への旺盛な需要が背景にあり、中でもAIサプライチェーン関連品の輸出比率は2023年の約20%から2025年には約32%へと急伸した。

FDI流入も堅調で、実行額は9%増の過去最高276億ドル。2026年第1四半期の新規登録FDIも前年同期比36%増と勢いは続いている。観光分野では外国人訪問者数が20%増の2,120万人を突破し、サービス業の回復を後押しした。

実質GDP成長率・ASEAN比較:ベトナム・タイ・フィリピン・インドネシア・マレーシアの実質GDP成長率推移(%)。ベトナムは2026年第1四半期に前年同期比7.8%成長を記録し、比較対象国の中で最高水準を継続。(出所:Haver Analytics)

高まる下振れリスク、銀行・通貨・インフレに警戒

一方で世界銀行は近い将来のリスクについて警鐘を鳴らす。世界的な経済環境の軟化や原油価格の下落が対外環境を悪化させており、イラン戦争に起因する物価上昇圧力も続く。4月のインフレ率はすでに政府目標の4.5%を超え、世界銀行は2026年のインフレを4.2%と予測する。

銀行部門でも信用の伸びが預金獲得を上回り、資金調達面での逼迫が生じている。中東紛争が長期化すれば、輸出の落ち込みや企業の高い債務レバレッジと相まって、通貨・金融システムへの圧力が一段と強まる恐れがある。

支出別成長寄与度:2025年第1四半期はGDP成長率8%超を記録し、最終消費と輸出の寄与が顕著に拡大。一方、輸入の急増が引き続き下押し要因となっている。(出所:NSO・世界銀行)

求められる成長モデルの転換

世界銀行はベトナム政府が掲げる「2030年代に年率10%成長」目標の達成を困難視しつつ、処方箋として成長モデルの刷新を促している。生産要素の投入と銀行主導の融資に依存した現行モデルから脱却し、生産性向上・資本市場の深化・質の高いFDI誘致へとシフトすることが中長期的な持続成長の鍵だと指摘する。

高成長の継続か、リスクへの対応か——ベトナム経済はその分岐点に立っている。