ベトナム、砂糖飲料に初課税|ビール税率は2031年に90%へ
ベトナム国会は2025年6月14日、改正特別消費税(SCT)法を賛成多数で可決した。嗜好品への課税に、糖分の多い清涼飲料を初めて加えたのが大きな変更点である。糖分が100ミリリットル当たり5グラムを超える清涼飲料品に、2027年1月から8%、2028年1月から10%の税率を課す。
ビールおよび度数20%以上の酒類も、2031年までに65%から90%へ段階的に税率を引き上げる見込みだ。法律は2026年1月1日に発効しており、砂糖飲料への課税は2027年から始まる。
「砂糖飲料税」の導入は国民の健康を守る仕組みだと評価する声がある一方で、飲料・ビール業界からは消費減退への懸念が上がっている。

| 品目 | 現行 | 2027年 | 2028年 | 2029年 | 2030年 | 2031年以降 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 砂糖飲料(5g/100ml超) | 非課税 | 8% | 10% | 10% | 10% | 10% |
| ビール・度数20%以上の酒類 | 65% | 70% | 75% | 80% | 85% | 90% |
| 度数20%未満の酒類 | 35% | 40% | 45% | 50% | 55% | 60% |
特別消費税とは何か?砂糖飲料が初めて課税対象に

特別消費税は、
- たばこ・酒類・自動車・ガソリン・エアコンなどの物品
- カラオケ・カジノ・ゴルフといったサービス
など、およそ20の品目・サービスに課される間接税である。健康や環境への負荷が大きい消費を抑える狙いだ。
今回の税制改正は、公衆衛生の保護と財源拡大を掲げて成立した。世界保健機関(WHO)は新たな税制の成立を「健康を守る歴史的な一歩」と評価している。
砂糖飲料税、2027年に8%・2028年に10%へ段階引き上げ
ベトナムでは初めて、砂糖飲料への課税が導入されることとなった。飲料100ミリリットル当たり、糖分が5グラムを超える清涼飲料が対象。国家標準(TCVN 12828:2019)に該当する飲料を対象に、ラベルに表示された糖の総量で判定する。
税率は
- 2027年1月に8%
- 2028年1月に10%
へと段階的に上がる予定である。牛乳・果汁100%ジュース・ミネラルウォーターなどは対象外となる。人工甘味料のみを用いた無糖飲料は課税が見送られたものの、今後も検討を続ける。
ビール税率、2031年に90%到達 ベトナム飲料市場に重荷

酒類への課税も強化される運びとなった。ビールと度数20%以上の酒類は、現行の65%から2027年に70%、以後は毎年5%ポイントずつ上がり、2031年に90%へに達する。度数20%未満の酒類も35%から60%へと税率が上がる予定だ。
今回の税制改正は、縮小局面にあるビール市場にとって、追い打ちとなる可能性がある。コロナ禍後の景気減速や、2020〜26年まで施行されてきた飲酒運転厳罰化政令の影響で、ベトナムのビール業界は販売の低迷が続いてきた。
ベトナム・ビール酒類飲料協会(VBA)によれば、2023年は業界の売上高が前年比11%、税引前利益が23%落ち込んだ。
その後も低迷は続き、上場ビール14社の2025年売上高合計は前年比で12%減。純利益は3%増と持ち直したものの、主因はコスト削減によるものと見られている。ビールの需要減を受けて、ハイネケンは2024年6月に、中部クアンナム省の工場の操業を停止している。
「砂糖飲料税」は消費者・生産者の行動を変えると期待

出所:VnEconomy “Ministry of Finance proposed a 10% tax on sugary drinks”
財務省が発表した試算によれば、砂糖飲料に10%課税を始める初年度に、年約2.4兆VND(約146億円)の増収が見込まれる。ただし試算は「課税対象が市場の約8割を占め、価格上昇で消費が約2割減る」という前提で計算されており、実績の予測値ではない。
財務省自身も「飲料を控える効果が出るほど、税収は細る」効果を織り込んでおり、「増収は初年度にとどまり、以後は徐々に減少する」と説明する。消費者が砂糖飲料から低糖・無糖の製品へと移り、メーカーも課税される基準を下回るよう糖分を抑える(リフォーミュレーション)と予想されるためだ。
ベトナムの酒類増税、日本酒輸出にも価格圧力
ベトナムにおいて酒類への税率が段階的に引き上がると、近年伸びている日本からの酒類輸出にブレーキがかかるのではないかと指摘される。
ベトナムにおける日本酒市場は、2022年に輸出額でおよそ7億円(世界9位)まで伸びた、注目を集めるマーケットである。もっとも足元では輸出がやや鈍り、2025年の対ベトナム輸出額は約4.7億円で世界12位となった(出所:日本酒造組合中央会「2025年度日本酒輸出実績」)。
一方、2025年の輸出単価は1リットル当たり1,260円と主要輸出国の中では依然として高単価である。2024年に引き続き輸出単価は4%上昇しており、購買力の高い層に堅実な需要があると考えられる(出所:日本酒造組合中央会「2025年度日本酒輸出実績」)。
ベトナムに輸入される酒類には、関税や特別消費税、付加価値税(VAT)が累積して店頭価格に反映される。そのため、税率が上昇すると価格競争力に直結する。日本酒は高単価で売れるマーケットであるだけに、価格とブランド戦略を見直す必要があるだろう。

国別 日本酒の輸出単価(2025年、単位は1リットルあたり円) 出所: 日本酒造組合中央会「2025年度日本酒輸出実績」をもとにInfoBank作成
(※)本記事のVND(ベトナムドン)の金額はすべて、1円=164.2VNDで換算している。出所はBloomberg(2026年6月5日時点)。

ベトナム経済メディアInfoBank 記者(Journalist)
新居 理有
Real Arai
龍谷大学、経済学部准教授、及び財務省財務総合政策研究所客員研究員。
京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。財政政策・財政学・公共経済学・マクロ経済学を専門とし、2023年4月より龍谷大学に着任。
財政やマクロ経済の分野を中心に研究・教育活動に取り組んでいる。
