製造業向けビジネスマッチングプラットフォーム「エミダス」を運営する株式会社NCネットワークは、2017年からベトナム・ハノイで製造業展示商談会「EMIDASものづくり商談会」を毎年開催している。

2026年は出展社430社、来場数2万人超を記録し、ベトナム最大級の製造業の商談の場へと成長した。中小製造業の調達と販路開拓をつなぐこの商談会からは、ローカル企業の台頭や高付加価値化に向かうベトナム製造業の現在地が窺える。

NCネットワークとベトナムのものづくり商談会

製造業マッチングを担うNCネットワークの事業

株式会社NCネットワーク(本社:東京都台東区、取締役社長:内原康雄)は、登録企業数2万2,000社以上を誇る日本最大級の製造業向け受発注・マッチングプラットフォーム「エミダス(EMIDAS)」を運営している。

社是に「挑戦する製造業のために」を掲げ、製造業の「販路を広げたい」「調達先を探したい」という二つのニーズに応えるサービスを提供している。海外ではベトナム・ハノイのほか、中国やタイでも展示商談会を展開してきた。

「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」の会場の様子
「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」の会場の様子(画像出所)NCネットワーク提供

中小の受託加工企業が主役のものづくり商談会

「EMIDASものづくり商談会」は、実際にものづくりを担う加工会社や中小製造業が数多く出展する「商談型」の展示会である。出展の中心は中小の受託加工企業で、「新たな加工委託先を探したい」「現地調達率を高めたい」といったニーズを持つ購買・開発・技術担当者と具体的な商談を進めやすい。

機械・設備や製造業向けサービスの提供企業にとっても、潜在顧客と直接出会える場となっている。会期前に専用システムで各社の販売希望品・調達希望品を確認し、商談を申し込める点も特長だ。万人規模の集客力を持ちながら、中小製造業が出展しやすい料金体系を維持している。

2026年は430社が出展、2027年の募集も開始

ハノイでの開催は2017年以降毎年続き、2025年には353社・500ブースが出展、3日間の来場数は1万3,800人を超えた。2026年(9月16日〜18日)は会場のVietnam Exposition Center(VEC)でホール5・6の2ホールを初めて使用し、会場規模を前年の約2倍に拡大。

出展社430社(うちバイヤー30社)、800ブース、来場数2万683人を記録した。出展社の73.5%を製造・加工業が占め、国・地域別ではベトナム企業が50.3%、日系企業が37%だった。出展社の満足度は88%、次回の出展希望は95%に上る。

次回の「EMIDASものづくり商談会2027 ハノイ」は2027年9月15日(水)〜17日(金)に同会場で開催され、3万人の来場数を見込む。出展社の募集は2026年9月7日から始まっている。

数字で見る「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」
数字で見る「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」

ベトナムでものづくり商談会が生まれた経緯

今回、InfoBankではNCネットワークベトナムCEOの大塚哲久氏にインタビューを行い、商談会の成り立ちから2026年開催の反響、ベトナム製造業の展望までを聞いた。(聞き手:InfoBank編集長 三浦)

NCネットワークベトナム CEO 大塚 哲久氏
NCネットワークベトナム CEO 大塚 哲久氏

ベトナム製造業の調達ニーズに応える商談の場

三浦: NCネットワークがベトナムでものづくり商談会を始めたきっかけと、ハノイでの初開催に至った経緯を教えてください。

大塚: 製造業の海外展開は、どの国でもまずメーカーが進出し、続いて量産部品を供給する企業が進出するという流れをたどります。数年たつと部材はひとまず揃いますが、多くは中国や日本からの調達です。

そこへメーカーからコスト削減の要請が届き、現地で新たな調達先を探す動きが一斉に始まります。企業や取引先の地方銀行から個別の相談が相次ぐようになったため、関係者が一堂に会してニーズをまとめて解決しようと始めたのが、中国での商談会でした。

その約10年後、ベトナムでも同じ状況が生まれました。私が駐在していた2014年ごろにはすでに個別の相談が多く、毎月テーマを決めてミニ商談会を開いていたのが原点です。そして2017年、当社の拠点があるハノイで第1回を開催しました。バンコクもほぼ同じ経緯で始めています。

「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」の会場の様子(画像出所)NCネットワーク提供
「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」の会場の様子(画像出所)NCネットワーク提供

ベトナム北部の産業集積と出展規模の急拡大

三浦: 当時の北部の産業構成と、その後の出展規模の推移についてお聞かせください。会場を広げても出展が集まるのは、それだけ需要があるということでしょうか。

大塚: 当時、地場産業はまだ大きく育っていませんでした。1990年代半ばに日系の大手事務機器メーカーが進出し、その後、大手二輪・自動車メーカーなどが続きました。2010年代の北部のものづくりの中心はオートバイ、プリンター、冷蔵庫などの白物家電で、2013年ごろからは韓国の大手電機メーカーがスマートフォン生産を始め、その周辺のサプライチェーンも活気づいていました。

商談会の出展社数は、2017年の初回が100社余りで、コロナ禍を経た2024年ごろに200社台となりました。200社程度がハノイ市内の従来の展示会場で開ける上限でしたが、9万平方メートルの建屋を持つ大型展示会場が新たに開業し、2025年から一気に拡大できるようになりました。

それでも出展が集まるのは、調達先探しが進んだ後、日系に限らず多くの企業が販路を求めるようになったからです。現在のベトナムでは「調達先を探したい」と「販路を広げたい」という二つのニーズが同時に高まっており、それがこの3年ほどの拡大を支えています。

ものづくり商談会2017の当時の様子(画像出所)EMIDAS
ものづくり商談会2017の当時の様子(画像出所)EMIDAS

中小製造業を主役に据えるNCネットワークの理念

出展しやすい料金とデータベースの相乗効果

三浦: 「中小の受託加工企業が主役」というコンセプトは、時代とともに変わってきましたか。他の展示会と比べて出展料を抑えられている理由もお聞かせください。

大塚: 根本は変わっていません。当社の社是は「挑戦する製造業のために」で、その中心にいるのは中小製造業です。中小企業が出展しやすい価格設定と、中小企業が目立つ会場レイアウトは、規模がどれだけ大きくなっても守り続けます。

料金を抑えられるのは、当社が展示会専業の会社ではなく、展示会単体の収支だけで事業を評価していないからです。出展者が増えれば、エミダスを軸に当社が育てている製造業データベースの情報が充実します。そうした独自の評価軸を持っているため、料金は中小企業が参加しやすい水準にとどめています。

エミダスサービスは会員登録者数22,000社以上を誇る、製造業に特化したWEBサイト(画像出所)EMIDASサービス
エミダスサービスは会員登録者数22,000社以上を誇る、製造業に特化したWEBサイト(画像出所)EMIDASサービス

ローカル企業の台頭と蓄えた技術を生かす力

三浦: 出展企業の国籍構成の変化や、ローカル企業の技術・品質の向上をどのように感じていますか。

大塚: 最大の変化はローカル企業の増加です。第1回はほとんどが日系企業で、ローカル企業は9社にとどまっていましたが、現在は出展社の約半数がベトナム企業で、日系以外の企業が6割を超えています。ベトナムで事業を続けるには、ローカル企業に参加してもらえる仕組みが欠かせません。

ものづくりのレベルも着実に上がっていますが、それ以上に印象的なのは商売のうまさです。ベトナムは現在、ASEANの中でも工業製品の輸出が際立って好調で、輸出先は米国を筆頭に欧州、中国と続きます。

例えば長年日系企業とオートバイ部品の取引を重ねてきた会社が、培った技術で欧州のオートバイメーカーとも取引できると気づき、売り込みに動く。単に技術水準が上がったというより、蓄えてきた資産を別の市場で試すことに長けているのだと感じています。

三浦: 成長著しいローカル企業は、意思決定の速さや交渉力も印象的です。その強みはどこから来るとお考えですか。

大塚: 国の違いというより、企業の規模や成長段階による違いが大きいと思います。日本でも中小企業と一口に言っても、300人近い会社と10人の会社では文化も考え方も大きく異なり、それはベトナムも同じです。

今は数百人規模の会社の経営者も、10年余り前は10人ほどで事業を営んでいました。この10年で会社を大きく育てた経営者が、そうした力に優れていたということで、その点は日本と変わりません。

2026年の反響と半導体で動くベトナム製造業

ものづくり商談会2026、商談の質に高い評価

三浦: 9月に開催された2026年の商談会の反響はいかがでしたか。出展企業が商談を獲得するために工夫している点もあれば教えてください。

大塚: 会期の前半は天候に恵まれませんでしたが、目的を持って足を運ぶ来場者が多く、出展企業からは「良い商談ができた」という声を数多くいただきました。

会場が広くなった分、人の流れに差が出たエリアもありましたが、「来年はより良い場所に出たい」と早々に申し込む企業もあり、次回の申し込みは早いペースで入り始めています。ものづくりに特化した大規模展示会として定着してきた手応えを感じています。

商談の獲得に向けては、自社の強みがひと目で伝わるデザインのポスターを用意するなど、各社がブースの見せ方を工夫しています。

「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」の会場の様子(画像出所)NCネットワーク提供
「EMIDASものづくり商談会2026・ハノイ」の会場の様子(画像出所)NCネットワーク提供

半導体サイクルとベトナムが目指す高付加価値化

三浦: 米中対立やチャイナプラスワンの動きは、会場での企業の動きに表れていますか。また、ベトナム政府が国を挙げて進める半導体の人材育成や優遇政策をどうご覧になりますか。

大塚: 会場で直接それを感じる場面は、実はそれほど多くありません。むしろ目立つのは半導体サイクルの影響です。半導体は数年ごとに好不調の波を繰り返しますが、前回の好況期には「ベトナム調達」という発想はありませんでした。今回は半導体製造装置の部品や、半導体の検査に使うチェッカーなど、加工難度の高い部材のサプライヤー探しが話題に上り始めています。

ただ、半導体サイクル自体は一過性のトピックで、政府が高付加価値分野に舵を切ったのは別の理由からです。ベトナムは1990年代に米国の経済制裁が解除されて以降、外資誘致に注力し、工業製品の輸出を大きく伸ばしてきました。

しかし家電やPCの輸出が急増する一方で、そこに使う電子部品は輸入に頼っており、国内で生み出す付加価値は思うように増えていませんでした。そこで、半導体の前工程から後工程まで国内で担える体制を目指し、高度人材の育成や技術を持ち込む企業の優遇を進めています。売上を伸ばす段階から、利益を高める段階に入ったといえます。

NC Networkベトナムが四半期ごとに定期発行しているEMIDAS Magazine。ベトナム唯一の日本語製造業専門誌(画像出所)NCネットワーク
NC Networkベトナムが四半期ごとに定期発行しているEMIDAS Magazine。ベトナム唯一の日本語製造業専門誌(画像出所)NCネットワーク

「世界の工場」が視野に入るベトナム製造業の展望

輸出の勢いを生かす時間軸と国内インフラへの期待

三浦: 中所得国の罠も意識される中、組立中心から高付加価値化へ向かうベトナム製造業の展望をどうご覧になりますか。

大塚: 輸出と国内インフラの二つに分けて考える必要があります。輸出については、世界から注目されている今の勢いを生かし、国内でできる工程を少しずつ増やして付加価値を高めていくことは十分に可能だと見ています。

ただし時間は限られています。各国はインドにも目を向けており、インドからの調達が本格化する前に「ベトナム調達は良い」と世界に認められている必要があります。現状はそれができており、「世界の工場」と呼ばれる地位も視野に入ってきたと思います。

国内インフラでは鉄道や原子力発電所の計画が動き始め、国内の大手デベロッパーが南北高速鉄道への参画に向けて鉄道会社の設立を検討するなど、国内資本による挑戦も出てきました。鉄道や発電所が実現すれば、国内の製造業にとって非常に大きな機会になると期待しています。

データベースで「売りたい」「買いたい」を常時結ぶ

三浦: 今後の事業展開についてお聞かせください。ベトナムでもWebを通じた調達・販路開拓は広がっていきそうですか。

大塚: 当社は、製造業の「売りたい」「買いたい」というニーズに応えることを事業領域としています。その基盤となる製造業データベースを広げる手段として、展示会とWebマーケティング支援を位置づけています。データベースが充実すれば、ベトナムのどこにどのような加工ができる会社があるかがひと目で分かり、調達先探しにも役立ちます。今後2〜3年で両方のニーズをより密接に結び付け、年1回の展示会に限らず、常に「売りたい」「買いたい」が解決される状態をつくりたいと考えています。

ベトナムでのWebマーケティングには、まだ大きな伸びしろがあります。現地で調達先を探すのは、外資系企業でも勤続年数の長いベトナム人スタッフが多く、まずベトナム語で検索します。日系企業の場合、現地法人の情報は日本本社のサイト内で紹介されていることが多いため、ベトナム語での情報発信を加えることで、新たな取引先と出会える可能性が広がります。SNSの活用も含め、取り組みの余地は大きいと考えています。

ホームページの形を整えること自体は、AIの普及で手軽になりました。これから価値を生むのは中身、つまりコンテンツです。当社が得意とする領域であり、コンテンツづくりで付加価値を提供していきます。

■ EMIDAS ものづくり商談会 2027 ハノイ会場 概要

  • 会期:2027年9月15日(水)~17日(金)9:00~17:00(3日間)
  • 会場:VIETNAM EXPOSITION CENTER (VEC)
  • 出展社数:500社(予定)
  • 来場者数:30,000名(想定)
  • 主催:NC Network Group
  • WEB :https://emidasfair.com/jp/hanoi/
  • お問い合わせ:NC NETWORK VIETNAM JSC(ベトナム)
  • E-mail: emidasfair-vn@nc-net.or.jp

取材を終えて:ものづくり商談会が支えるベトナムの成長

コスト削減要請を背景に始まった調達先探しの場は、ローカル企業の販路開拓意欲を取り込みながら、2万人超が集う商談の場へと発展した。出展社の約半数をベトナム企業が占めるまでになった歩みは、現地サプライヤーの層が厚みを増していることを示す。

ベトナムでは長年、部品や素材を担う裾野産業の育成が課題とされてきた。その課題を乗り越え、半導体など高付加価値分野の国内生産を目指す取り組みは、国の発展を左右する重要なテーマであり、引き続き注視したい。

その中でNCネットワークは、年1回の商談会に加え、製造業データベースとWebマーケティング支援を組み合わせ、「売りたい」「買いたい」を常時つなぐ仕組みづくりを進めている。調達先開拓や販路拡大を検討する日本企業にとって、同社の取り組みは一層注目を集めていくだろう。


ベトナム経済メディアInfoBank 編集長

三浦 賢弥

KENYA MIURA

山形県山形市出身。筑波大学大学院でのベトナム研究・ホーチミン市師範大学での留学を経て、JETRO(日本貿易振興機構)に入構。

ベトナム進出コンサルティング・市場調査会社に7年間携わり、2026年1月にベトナム経済メディアInfoBankを企画・運営する株式会社InfoBase創業。代表取締役に就任。

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